<社説>沖縄相リンク発言 安倍首相は更迭判断を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 これが本音なのだろう。県関係自民党国会議員の都内での政治資金パーティーで、鶴保庸介沖縄担当相が次期衆院選を念頭に自民党議員の当選を鼓舞し、「振興策とリンクしている」と明言した。

 失言では済まされない。沖縄振興策は沖縄振興法に基づき適正に予算措置すべきだ。特定政党の議員の当落に「振興策がリンクする」との認識は、沖縄担当大臣の職責に反する。
 鶴保氏は自民党の参院議員であり、安倍晋三首相に任命され沖縄担当の国務大臣となった。国務大臣は国家公務員の特別職である。
 閣議決定の「国務大臣規範」は「政治家であり国務大臣の公職にある者として政治と行政への信頼を確保し、国家公務員の政治的中立性を確保」すると義務付ける。
 また国家公務員について憲法15条は「公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と規定し、特定の政党、団体に偏らない政治的中立性、公平性を義務付けている。
 担当相は自民党議員のパーティーで「振興策と申し上げているが、一つだけ大きな声で言えないことがある」と前置き、県関係の自民党国会議員の名前を列挙し「県選出の国会議員の先生方に必ず来たるべき選挙で勝利してもらいたい。その使命を皆さんも理解いただきたい。振興策とリンクしている」と公言したのである。
 沖縄振興策は自民議員の当落次第と明言するもので、政治的中立性の逸脱は明白だ。衆院解散だけでなく2年後の県知事選をもにらんだ発言と疑われても仕方がない。
 省庁の政策や予算配分が、特定政党を利するか否かによって大臣が決定し、さじ加減をすることがあってはならない。
 担当相の発言は、沖縄振興の責任ある推進に対する県民、県行政、政党関係者の期待と信頼を大きく損ねた。県民のみならず国民の国家行政の公平性に対する信頼をも失墜させたと指摘せざるを得ない。
 担当相は就任会見で振興予算に関連し「消化できないものを無理やり食べてでは血税の無駄遣い」と発言。先の辺野古訴訟高裁判決でも「注文は一つ、早く片付けて」と発言した。
 沖縄担当相としての適格性に深刻な疑念を抱かざるを得ない。
 安倍首相は任命者の責任として、政治的中立性、公平性が疑われ、信頼を失った沖縄担当相の更迭を判断すべきだ。