<社説>ホテル税制優遇 実情に合った制度設計を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 右肩上がりの成長を続ける沖縄観光で、懸案とされているのがホテル確保だ。いかに投資を呼び込むかが課題だったが、県が目標とする入域観光客1千万人に向けて、明るい兆しが見えてきた。

 投資税額や固定資産税控除などが受けられる「観光地形成促進地域制度」で、内閣府は新規ホテルや既存ホテルの増設も税制優遇の対象とするよう制度拡充への協議を財務・総務両省と始めた。2017年度税制改正に盛り込まれれば、沖縄にとって朗報だ。制度拡充の実現へ国の議論に注目したい。
 観光地形成促進地域制度の前身である観光振興地域制度は1998年度に作られた。当初は全国を対象とする「総合保養地域整備法」を参考にしており、スケート場やスキー場なども対象に含まれていた。一方でホテルは税制優遇の対象に盛り込まれていなかった。
 税制優遇の対象は図書館やボウリング場など、観光客でなく主に住民が利用する施設も含まれていた。12~15年度に観光地形成促進地域制度を活用したのが7件にとどまっているのは、制度の周知不足もあるが、利用しづらい制度であったことが背景にあるのは否めないだろう。
 沖縄の実態に合った制度設計を考えれば、内閣府がホテルを税制優遇対象と認めたことは大いに評価できる。県の要望も踏まえ、政策面でホテル建設への投資を後押しすることになれば、沖縄経済のけん引役でもある観光業のさらなる発展に寄与するのは間違いない。
 ただし一つ注文もある。税制優遇が新設と増設のホテルだけを対象としている点だ。
 大手ホテルや外国資本にとっては、事業拡大や沖縄進出の契機となるだろうが、県内の中小規模のホテルには無縁の制度となる可能性もある。
 沖縄観光発展の契機となった沖縄国際海洋博覧会から40年が経過し、地元ホテルにとっては既存施設を改築し、付加価値を高めるリノベーションの必要に迫られている。ホテルの新設・増設だけでなく、改修にも適用されるよう望む。
 沖縄への観光客数は11年度の548万人から15年度は793万人と大きく伸びた。世界に誇る観光地として飛躍するためにも、政策面での後押しは重要だ。そのためにも沖縄の実情に合わせた制度設計がなされるよう期待したい。