<社説>訓練場返還計画 基地汚染の情報開示が先だ


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 米軍用地の返還は汚染物質の徹底除去が必須条件だ。沖縄防衛局は米軍北部訓練場の約半分の返還実施計画案を提示したが、汚染除去期間を「1年から1年半」に限定するのは承服できない。

 県内の米軍基地返還は、汚染物質の除去が早期返還の大きな障害となっている。恩納通信所跡地のカドミウム、水銀、PCB、鉛、ヒ素、キャンプ桑江跡地の鉛やアスベストなど、汚染除去が返還を遅らせた事例は枚挙にいとまがない。
 北部訓練場内では、猛毒のダイオキシンを含む枯れ葉剤の散布が、健康被害を訴える元米兵の証言で明らかになっている。墜落した米軍ヘリの汚染の問題もある。
 防衛局は県が求めた事前調整に応じずに計画案を提示した。県が受理を拒んだのは当然だ。通常でも2~3年の調査・除去期間を半分に短縮するのは、過去の事例に照らして短過ぎる。日程ありきでなく、調査・除去に必要な期間を、県と調整すべきだ。
 問題の根幹は汚染除去の原状回復義務を米軍に負わせない日米地位協定にある。基地内の環境汚染の情報が県側に開示されぬまま、防衛局が曖昧に対応してきたことが汚染除去を遅らせる原因だ。
 枯れ葉剤についても米軍は使用を否定し、防衛局は安易に追認している。元米兵の証言を無視し、説明責任を果たしていない。
 防衛局は訓練場内の訓練や米軍機事故など、汚染物質に関する履歴情報を米軍に要求し、情報開示すべきだ。県は必要な対応を防衛局に突き付けてもらいたい。
 返還実施計画案は国頭、東両村にも提示された。地元が早期返還を望み、「やんばる国立公園」に組み込んで世界自然遺産候補とする期待を抱くのは理解できる。
 しかし汚染物質の除去が不十分では将来に禍根を残す。汚染の徹底除去が、世界自然遺産の環境保全につながることを再確認したい。
 米海兵隊「戦略展望2025」は、北部訓練場の返還を「使用不可能な訓練場の返還」と認め、オスプレイを運用するヘリパッド移設などで「最大限に活用する訓練場を新たに開発」と歓迎している。
 米軍が「使用不能」と見なす訓練場の返還は当然だ。県はヘリパッドのオスプレイ運用に反対を堅持しつつ、返還される訓練場の汚染除去を徹底するよう強く米軍、日本政府に求めてもらいたい。

英文へ→Editorial: Base contamination information disclosure must precede land return plan