<社説>沖縄に警官出向 小手先の対策でしかない


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 小手先の対策でしかなく、在沖米軍から派生する事件事故対策に政府が本気で向き合っているとは思えない。

 警察庁が来年1月中旬から3月末までの2カ月半、全国の警察から警官100人を沖縄県警に出向させる計画が分かった。全国の都道府県警察に「特別出向」の人員を募るよう指示した。
 沖縄県内で警官100人を増員する計画は、ことし4月に起きた米軍属女性暴行殺人事件を受けて、政府が6月に発表した犯罪抑止策に基づく。
 主な策は(1)沖縄総合事務局が防犯パトロールの非常勤職員を雇用(2)車両100台規模のパトロール隊創設(3)警官100人、パトカー20台増強(4)一括交付金で県、市町村が防犯灯や防犯カメラ整備-などだ。
 そのうち防犯パトロールは採用が間に合わず、9月末まで県内17の国機関の管理職などで対応した。車両100台は約50台規模とほぼ半分にとどまった。防犯灯などは9月の会議で部会を設置すると決まっただけだ。
 警官増員も遅々として進まない。菅義偉官房長官は計画を「本年度中に実施すべく取り組む」と明言した。年度末に「警官100人」達成の形を残すためだと疑いたくもなる。しかも4月以降は半減させるという。
 若い女性の命も尊厳も奪ったあの事件から、何が変わったのであろうか。
 日米地位協定は米軍属の適用範囲見直しにとどまったが、いまだ法的拘束力のある文書はまとまっていない。
 米軍は相変わらず「綱紀粛正」と言うが、飲酒運転に限っても再発防止策発表後、判明分だけで逮捕者は7人。23日にも米海兵隊員2等軍曹(40)が逮捕された。
 事件を受けた防犯パトロール要員とされた全国の防衛省職員も、実際は北部訓練場のヘリパッド建設現場の警備に充てられた。建設現場で大阪府警機動隊員は市民に「土人」「シナ人」と暴言を吐いた。
 政府が沖縄の米兵犯罪抑止に真剣に向き合わず、逆に市民の基地反対運動抑え込みしか考えていないことが分かる。
 沖縄で米兵犯罪が繰り返される根源は過重な米軍基地の存在だ。根を断つどころか、枝にはさみを入れたふりをするだけの対策は必要ない。