<社説>空手演武ギネス認定 発祥地の誇りを発信した


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 「イチ、ニ、サン…」。力強い号令がこだまし、約1キロにわたって居並ぶ老若男女の4千の拳が一糸乱れず突き出された。

 空手発祥の地・沖縄の心意気が凝縮された歴史的演武は壮観そのものだった。身震いするほどの感動を覚えた県民は多いだろう。
 「空手の日記念演武祭」が23日、那覇市の国際通りで催され、3973人による「普及形1」の一斉演武が認められ、「同時に形を行った最多人数」のギネス世界記録として正式に認定された。
 空手を生み出し、とどろかせた郷土の誇りを世界に発信した快挙を喜びたい。2013年8月にインドで達成された809人を大幅に上回る圧倒的な記録だ。
 幼児から沖縄空手界の重鎮まで網羅した約4500人の参加者の演武を100人の監視員がチェックした。約2時間かけて正式認定されると歓喜がはじけた。
 きょうは「空手の日」である。1936年10月25日に「空手」表記が公式に決まったことを記念し、県議会が2005年に定めた。80年の節目を刻む上でも意義深い記録達成となった。
 08年には各界の協力で県内空手4団体が大同団結し、沖縄伝統空手道振興会が設立された。ギネス記録は伝統文化の普及に結束して取り組んできた成果とも言える。
 沖縄空手道振興会長を務める翁長雄志知事は「沖縄空手界が一体となって達成した」と喜んだ。ウチナーンチュのアイデンティティーが一層発揚される契機になろう。
 世界記録達成に導いた空手関係者の熱意と流派を超え、はせ参じた参加者に深く敬意を表したい。
 世界空手連盟には192の国・地域が加盟する。世界のウチナーンチュ大会に参加する県系人や空手に打ち込む外国人も国境を越えて参加して彩りを添えた。6千万人とも1億人とも言われる空手愛好者の裾野の広がりが、20年東京五輪の正式種目採用の原動力となった。
 新記録達成は五輪競技会場、事前合宿などの沖縄誘致を後押しする。関係者が結束して、年内に予定される会場の正式決定まで誘致活動をさらに強化してほしい。
 「空手に先手なし」。先制攻撃でなく、身を守るための「平和の武術」は、沖縄が希求する恒久平和の理念にふさわしい。東京五輪限りでなく、永続的な競技種目となるよう、働き掛けを強めたい。