<社説>世界県人大会閉幕 肝心共有し飛躍しよう 沖縄新時代の到来を告げた


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 ウチナーンチュの魂が揺さぶられる一体感に満ちていた。この島に生まれ育ち、暮らし、ルーツを持つことを心の底から誇りたい。閉会式とグランドフィーナーレにそんな思いがかき立てられた。

 26カ国・2地域からの過去最多となる海外参加者7297人を含めて約1万6千人が参加し、多くの県民も交流した第6回世界のウチナーンチュ大会が閉幕した。
 参加者が4世、5世まで広がる中、ウチナーンチュ精神の継承が課題とされてきたが、海外参加者は前回を大きく上回り、若い世代が着実に交流を深めている。21世紀の沖縄を支える人的資源の集積を高く評価し、喜びたい。

ウチナーンチュの日

 プレイベントの世界若者ウチナーンチュ大会に象徴されるように、沖縄の「肝心(ちむぐくる)」を共有して共に飛躍を目指す気概に満ち、母県の県人と国内外の県系人のネットワークが広く深くなる新時代の到来を実感させる大会となった。
 閉会式があった10月30日が「世界のウチナーンチュの日」に制定された。制定宣言は、「われわれウチナーンチュ」は「未来を創造する力」「世界へ飛び立つ勇気」「豊かな伝統文化」「困難に打ち勝つ不屈の精神」などを持っていると高らかにうたい上げた。
 格調高く、誇りに満ちた制定宣言に参加者は大きくうなずき、「ウチナーンチュ」コールが会場にこだまする光景は感動的だった。
 沖縄人が持つ「思いやり」「優しさ」「助け合い精神」などを示す「肝心」は心の豊かさを表し、制定宣言の骨格を成す。異文化の中で共生する羅針盤ともなろう。
 世界中の県系人社会で「世界のウチナーンチュの日」が認知され、新たな交流、伝統文化継承の節目に位置付けられる意義は大きい。
 県系人の強まる絆の源泉にあるのは、沖縄の豊かな文化を核にしたアイデンティティーの再確認であり、古里・沖縄の過去と現在、そして未来を見詰め、発展させたいという気概である。三線やエイサー、しまくとぅばの継承に力を入れ、郷土の文化を生活の中に取り込んできた。母県沖縄と移住先に独自性を持つ豊かな文化が築かれた。
 会を重ねるごとに強まる国内外の県系人と古里の絆の源泉にこの文化の力が宿っている。その価値をかみしめたい。
 一方、5年後の次回大会に向け、課題も浮かぶ。西原町が職員の負担などを理由に27年間続いた海外移住者子弟受け入れの休止を検討している。母県への思いを強める県系の若者たちをどう将来の懸け橋となる人材に育てるのか。沖縄の財産であるウチナーンチュネットワーク継承のあるべき姿を常に模索せねばならない。

沖縄救った送金

 移民の父と称される当山久三氏が「いざ行かん、われらが家は五大州」と移民を奨励した時代から1世紀余。移民1世は過酷な労働に耐えながら移住先で地歩を築き、「ソテツ地獄」と称されるほど疲弊した沖縄を送金で救った。1929年には県歳入の実に66%を海外からの送金が占めた。
 戦後の混乱期、沖縄戦で灰じんに帰した古里を救ったのも海外に巣立った県系人による「沖縄戦災救援運動」だった。私たちはその歴史を忘れず、感謝の念を持ち続けねばならない。
 大会期間中、国内外からの参加者が辺野古新基地や高江ヘリパッドの建設現場を訪れ、基地問題で試練が続く沖縄の実情を学んだ。それも大会の成果である。
 閉会式で次世代を代表し、松本カリナ沙登美さん(ブラジル)が「ブラジルも沖縄も問題を抱えてきた。その歴史と現在について深く考える必要がある。平和、民主主義、ジェンダー、平等、人権のある世界を目指して活動したい」と語った。沖縄の肝心を体現した未来志向のあいさつは力強く響いた。
 世界中の県系人の皆さん、「まじゅーん、ちばらなやーさい(一緒に頑張りましょう)」。