<社説>問われる安倍政治 強引な政権運営に「ノー」


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 共同通信の全国電話世論調査で「安倍政権下の憲法改正」に55%が反対した。「7月の参院選で改憲は争点だったと思わない」も71%に上った。

 安倍晋三首相は「在任中の憲法改正」を公言しながら選挙の争点化を避けてきた。争点を隠したままの選挙で改憲に必要な衆参3分の2以上の議席を確保し、近く衆院憲法調査会が憲法改正に向けた論議をスタートさせようとしている。
 世論調査の結果は、憲法9条を中心とした改憲への根強い反対と同時に、国民の信を問わずに改憲の準備を進める強引な政治手法への反対の意思表示と言えよう。
 また、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊への「駆け付け警護」の任務付与に「反対」が55%、衆院で強行採決の動きがある環太平洋連携協定(TPP)承認案についても「今国会にこだわらず慎重に審議すべきだ」が67%を占めた。
 駆け付け警護は憲法違反の批判を無視して強行成立させた安保法制による新任務で、「自衛隊が他国民を殺し、殺されかねない」とする国民の不安は大きい。
 農業や食の安全への影響などTPPの疑問点は多い。協定の内容の大部分を伏せたまま、議論も尽くさず承認採決を急ぐ政府・与党に国民は不信感を募らせている。
 国民の間に反対の多かった特定秘密保護法や安保法制を国会議員の数を頼りに成立させ、原発再稼働も強引に進める。今また駆け付け警護やTPP承認も国民の不安をよそに押し切ろうとする。安倍政権の強引な手法に、国民の反発は高まっている。
 象徴的なのが世論調査で「自民党総裁任期の延長」への反対が52%に上ることだ。
 自民党は2期6年の総裁任期を3期9年に延長する方向だ。これにより2021年9月までの安倍首相の続投を可能にする。国民の過半数がこれに反対しているのである。
 憲法、国民の声を無視し、国会議員の数で押し切る強権的な「安倍政治」に、国民が危機感を強めている証左だろう。
 強権政治の最たるものが沖縄への対応だ。辺野古新基地建設、ヘリパッド建設を強行し、自衛隊ヘリの投入など手段を選ばない。
 安倍政権は、国民や県民の声に背を向けた強引な政権運営の姿勢を改めるべきだ。