<社説>アセス外訓練道 環境保全放棄は許されない


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米軍北部訓練場の新たなヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設予定の「G地区」と国頭村の宇嘉川河口部を結ぶ訓練道を補修整備するため、沖縄防衛局は4694本の立木(りゅうぼく)を伐採する方針を示した。

 そもそも防衛局は2007年に作成した環境影響評価(環境アセスメント)に、訓練道の補修整備を盛り込んでいない。今年10月28日に県に提出した環境影響評価検討図書で、補修整備の方針を初めて示している。しかも当初の手作業での伐採を重機に切り替えている。
 重機での伐採には理由がある。菅義偉官房長官が年内で工事を完了させる意向を示したからだ。年内に終えるには、手作業では間に合わないと判断したようだ。
 このため立木の伐採規模は訓練道の幅1・2メートルではなく、3メートルに拡大された。重機が通れるようにするためだ。工期短縮を理由に本来必要のない立木の伐採を大規模に実施する。
 届け出を受けた県は補修整備などの「工法変更」を「実施すべきでない」とする文書を防衛局に手渡している。県は07年の環境アセスに補修整備が明記されていれば「知事意見を出すなどしかるべき措置・対処ができたはずだ」との立場だ。
 しかし防衛局は県の要求を無視する形で補修整備を強行する。これまでも07年のアセスで「動物への影響を少なくするため、1地区ずつ施行する」と表明していたが、工期を短縮するため3地区の工事を同時に着手した。この工法変更も県は「変更すべきではない」との意向を防衛局に伝えていた。
 なぜこんなことが許されるのか。
ヘリパッド建設は県条例の定めるアセス事業に該当しない。このため防衛局は環境アセスについて、自主的なもので法的義務を負わないとの立場を取っているからだ。
 環境影響評価法第3条には「国などの責務」としてこう記されている。
 「事業の実施による環境への負荷をできる限り回避し、または低減することその他の環境の保全についての配慮が適正になされるようにそれぞれの立場で務めなければならない」
 防衛局の姿勢は工期短縮だけを優先し、環境破壊の拡大には躊躇(ちゅうちょ)がない。明らかに第3条の責務を放棄している。許されるはずがない。法の趣旨を順守しない防衛局には工事をする資格はない。