<社説>沖縄相差別認めず 政権のモラルハザード背後に


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 鶴保庸介沖縄担当相はヘリパッド建設現場での機動隊員による「土人」発言について、「差別と断じることはできない」との見解を示した。国会の参院内閣委員会での公式発言である。

 「差別」と認定した政府見解に反し看過できない。沖縄相自ら沖縄差別を助長する発言の責任は重大だ。発言の撤回と共に改めて政府と沖縄相に、差別と認める見解表明を求める。
 「土人・シナ人」発言に対し、国民の人権の盾を担う法務省人権擁護局長は「差別的な言動は人権擁護上非常に問題」と指摘し、差別発言と認める見解を示した。
 同様に金田勝年法相が差別用語に当たるとの認識を示し、菅義偉官房長官も「不適切な発言。許すまじきこと」と弾劾した。
 その上で政府は「地方公務員法の規定に反する」とし、発言を違法と認める答弁書を閣議決定した。このような共通認識の中で、大阪府警は機動隊員に懲戒処分を下したのではなかったか。
 沖縄相の不見識な発言は、政府の「差別」「違法」の見解を揺るがし、閣内不一致のそしりを免れない。度重なる問題発言で沖縄相の信頼失墜は決定的だ。安倍晋三首相は沖縄相を更迭すべきだ。
 県幹部が沖縄相を、差別解消の「ヘイトスピーチ対策法を理解していない」と批判したのは的を射ている。「土人・シナ人」ほかの差別用語を容認、黙認する言動を閣僚が示すようでは、国民の間の差別を解消できるはずはない。
 沖縄相発言は「土人発言」の機動隊員をかばった大阪府知事の発言と同根だ。言葉にこもる差別意識を意図的にぼかし、結果的に県民に対する差別、偏見をさらに助長するものだ。政府は差別用語がまかり通るモラルハザード(倫理観の欠如)を放置してはならない。
 ただ、改めて閣僚発言を見直すと「(差別意識は)ないと思う」(菅官房長官)、「差別的意識に基づくか、事実の詳細が明らかではない」(金田法相)と否定、ないし明確な見解を避ける発言もあった。
 差別発言を矮小(わいしょう)化し、隊員個人の不規則発言として処分する「トカゲのしっぽ切り」で終わらせ、ヘリパッド建設を円滑に進める政権の思惑が働いてはいないか。
 米軍基地建設のため手段を選ばぬ安倍政権のモラルハザードが、沖縄相発言の背後にあることが疑われてならない。