<社説>高江車両選別規制 抗議行動の排除許されぬ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 訓練場建設に反対する市民を排除する行為は許されない。豊かな自然と地域の住環境の保全を求める行動は憲法で保障された正当な権利だ。

 新たなヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の建設工事が進む米軍北部訓練場沿いの県道70号で、警察が車両の交通規制を実施している。工事車両をゲート内に入れるためだ。しかも、抗議行動への参加者が乗っていると判断した車両を選別し、長時間足止めにしているのだ。
 一部の車両を恣意(しい)的に選び出し、通行を止めるとは異例の事態である。県警は車両選別の事実を認めている。抗議参加者は、危険で違法な抗議行動を行う可能性があるというのが選別の理由だ。
 これではヘリパッド建設に反対し、抗議の意思を表明しようとする市民の通行は認めないと言っているに等しい。このような交通規制が表現の自由を規定した憲法の精神とは合致しないのは明らかだ。直ちに車両を選別する交通規制をやめるべきだ。
 そもそも、市民の抗議行動は違法で危険だと言い切れるのか。一時期、資材搬入を止めるため、車両で県道70号を封鎖したが、9月末時点で打ち切った。地域住民への影響を考慮してのことだった。
 逮捕者が出ているのは事実だ。しかし、反対運動のリーダーを逮捕し、自宅や抗議行動の拠点であるテントを捜索するような行為は、市民の抗議行動の萎縮を狙った過剰警備との批判もある。
 むしろ高江周辺で問題になっているのは工事車両の通行のために、観光バスの通行まで止めるようなヘリパッド建設工事優先の警備の実態である。抗議行動に参加するため県内外から集まる市民を排除し、地域住民にも不便を強いるような警備は解消すべきだ。
 政府は12月中旬までに建設工事を終え、12月20日にも北部訓練場の約半分の返還式典を開く予定だ。オバマ大統領の在任中に沖縄の基地負担軽減をアピールする考えなのだろう。
 しかし、ヘリパッドの運用が始まれば、地域の住環境や貴重な動植物が生息する自然環境への負荷は一層高まることになる。北部訓練場返還の代償として、新たな基地負担を強いるのだ。
 そのようなヘリパッド建設に抵抗する市民の抗議行動を不当に抑圧してはならない。現地の警備活動の自制を求めたい。