<社説>再アセス要求 工事は到底許されない


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 米軍北部訓練場を抱える東村、国頭村と県の3者は沖縄防衛局に対し、ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設に関連し、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを対象にした環境影響評価(環境アセスメント)の実施を求めることを決めた。

 新設6カ所の着陸帯はオスプレイが使用する。すでに完成して提供されている2カ所はオスプレイが使用している。同機を対象にしたアセスの実施を求めるのは当然だ。
 防衛局が2007年に作成した環境影響評価はヘリパッドを運用する機種にオスプレイを含めていなかった。騒音などの影響について、CH53大型輸送ヘリを対象にまとめている。なぜそんなことになったのか。米軍は当初からオスプレイ使用を前提にしていたが、日本政府がその事実を長年隠蔽(いんぺい)していたからだ。
 ヘリパッドの建設は1996年の日米特別行動委員会(SACO)の最終報告に基づいている。北部訓練場の過半を返還する条件として、返還部分のヘリパッドを存続区域に移設することで合意した。
 その最終報告の草案には、米側がオスプレイ配備を明記していた。ところが当時の防衛庁の担当課長が文言の削除を求め、記述が消されてまとめられた。このため防衛局は2007年の環境影響評価図書を作成した際、県からオスプレイの運用の有無を尋ねられても「使用機種の変更はない」とする虚偽の回答をしている。
 県など3者の新たなアセスの実施要求に対して、防衛局は要求を拒否する考えだ。うそにうそを重ねた当事者の姿勢としては、あまりに不誠実ではないか。
 環境影響評価法の第1条はアセスの目的について「現在および将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資すること」とある。
 しかし提供された2カ所の着陸帯では現在、オスプレイが午後10時以降も離着陸を繰り返している。地元の児童らが夜間騒音の影響で睡眠不足となり、学校を欠席する事態も起きている。すでに地域住民は第1条に定めた「健康で文化的な生活」を送ることが困難になっている。防衛局のアセスが破綻している証拠だ。
 防衛局はオスプレイを対象にしたアセスを速やかに実施すべきだ。工事を継続することなど到底許されない。