<社説>普天間爆音訴訟 米軍機の飛行差し止めよ


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 琉球新報社が米軍普天間飛行場周辺に住む子育て中の市民100人にアンケートしたところ、約半数46人が「騒音により子どもの発育に不安を感じる」と答えた。米軍、政府は重く受け止めるべきだ。

 第2次普天間爆音訴訟の判決がきょう那覇地裁沖縄支部で言い渡される。爆音を止めるには米軍機の飛行を差し止めるしかない。市民の命と健康を守る判決を求めたい。
 「不安の理由」で切実さが浮き彫りになる。「睡眠不足」「子どもが怖いと言い、泣いて耳をふさぐ」「隣家から鳴き声が聞こえる」、中には「あまりにうるさくて引っ越した」という回答すらあった。
 「子どもの発育に不安を感じない」とする54人の中にも「宜野湾市で生まれ育ち騒音に慣れた」などの回答があった。「騒音に慣れた」から発育・健康被害がないとは言えない。「夜泣きがあったが、頻繁ではない」など異常な騒音に慣らされているのが実態だ。
 10月31日の日中、同市上大謝名で100・1デシベルの騒音を測定した。オスプレイやヘリが上空を旋回する激しい訓練の最中である。100デシベルは「直近で聞く救急車のサイレン音に相当する」とされる。
 14日早朝にも上大謝名で102・6デシベルを計測。米本国からの外来機が原因と見られている。
 18日にはやはり上大謝名で116・1デシベルを計測していた。これも外来機が原因だ。「間近で聞く自動車のクラクション音」の110デシベルを上回る爆音だ。
 このひと月でこのありさまだ。被害は上大謝名に限らない。公民館に騒音測定器があるからに過ぎず、爆音は市街全域に及んでいる。
 普天間飛行場には2012年10月にオスプレイが配備され、外来機の飛来も増加し、騒音被害は一層激しさを増している。特にオスプレイの低周波音は身体的弱者への影響が大きいことが環境省の調査で指摘され、子どもの聴覚器官への影響が懸念されている。
 神奈川県の厚木基地騒音訴訟の地裁、高裁判決は夜間・早朝の自衛隊機の飛行を禁じたが米軍機の飛行差し止めは認めなかった。国民の健康より米軍を上位に置く「二重基準」だ。
 那覇地裁の裁判官は救急車のサイレンや自動車のクラクション音級の騒音下に住み、子育てをしたいと思われるだろうか。米軍機の飛行か、国民の命と健康か。司法の良心が問われている。