<社説>伊江島騒音激化 基地負担軽減はまやかしだ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米軍垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが沖縄に配備された2012年10月から16年9月までの4年間で、米軍伊江島補助飛行場周辺で発生した60デシベル以上の騒音発生回数が8001回に上った。15年度は3199回で、通年計測の初年度に当たる13年度の2・4倍と過去最多となり、激化している。

 60~65デシベルの騒音は「時速40キロで走る乗用車の内部」に相当する。世界保健機関(WHO)の「環境騒音のガイドライン」では、屋外騒音60デシベル以上で睡眠障害が起こるとされている。
 それなのに航空機騒音規制措置(騒音防止協定)で飛行が制限されているはずの午後10時から翌日午前6時までの間に、60デシベル以上の騒音が4年間で265回も発生している。12年度は2回だったが、13年度62回、14、15年度はともに71回と増加している。16年度は半年で59回だ。このままの頻度なら最多更新は避けられない。
 伊江島補助飛行場にはオスプレイのほかハリアー戦闘攻撃機も離着陸している。米海兵隊作成の環境審査書に示された飛行経路は海側だが、14、15年度に騒音苦情を寄せた住民は、いずれも住宅地上空の飛行を確認している。つまり米軍は取り決めた飛行時間も飛行経路も守ることなく、縦横無尽にやりたい放題で飛行を繰り返しているのだ。
 さらに補助飛行場では8月から強襲揚陸艦の甲板を模した着陸帯「LHDデッキ」の拡張工事が進む。村は情報提供を米側に求めているが、回答は得られていない。
 拡張後の着陸帯面積は現行の2倍となり、海兵隊のMV22オスプレイだけでなく、空軍横田基地に配備予定のCV22オスプレイ、岩国基地に配備予定のF35ステルス戦闘機も補助飛行場での訓練を予定している。今後も騒音回数が増大するのは目に見えている。
 安倍晋三首相は9月の所信表明演説で、米軍北部訓練場の過半返還を挙げて「沖縄の基地負担軽減に全力を尽くす」と述べている。しかし海兵隊は基地運用計画「戦略展望2025」で北部訓練場について「最大51%の『使用不可能』な訓練場を日本政府に返還し、限られた土地を最大限に活用する訓練場を新たに開発する」と記している。
 これが果たして負担軽減と言えるのか。米軍戦略に協力し、言葉巧みに基地負担増を沖縄に強要しているだけのまやかしだ。