<社説>高齢者運転事故 地域課題として取り組もう


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 高齢者ドライバーによる痛ましい事故が相次いでいる。横浜市では集団登校の列に軽トラックが突っ込み、小学1年の男児が亡くなった。栃木や東京では病院敷地内で車が暴走し、死亡事故を起こした。

 運転者は3人とも80歳を超えていた。横浜の事故では、逮捕された87歳男性が「どこをどう走ったか覚えていない」と供述しており、認知症の疑いもあるとされている。栃木や東京の事故はアクセルとブレーキの踏み間違いが事故の原因とみられる。
 誰でも年を取れば視力や運動能力は衰える。認知機能の低下も起こり得る。だが、ほかに交通手段がなく、通院や買い物、介護などで運転せざるを得ない場合も多いのが実情だ。
 鉄道もなく、公共交通機関が整備されているとは言い難い沖縄社会で、車を手放せない高齢者もいる。
 県内の75歳以上の運転免許保持者は2013年以降年々増加し、今年10月末時点で4万5747人だ。今後も増加傾向は続くと予想される。
 一方で、75歳以上の運転者による人身事故は15年に272件発生し、2人が死亡した。高齢化に伴い、05年の141件から年々増加傾向にある。
 事故防止には自動車自体の対策も必要だ。自動ブレーキや衝突警報の機能は一部で実用化されている。ブレーキとアクセルの踏み間違いを防ぐなど、安全運転を支援する技術開発に自動車メーカーはさらに力を入れる必要がある。
 警察庁は来年3月の改正道交法の施行で免許更新時の認知機能検査を強化する。認知症の恐れがあると判断されれば医師の診断が義務付けられる。認知症ならば免許取り消しか停止になる。
 医師の診断以前に、運動技能に衰えが出れば、免許の自主返納が望ましい。県内では、免許証を自主返納した際に発行される「運転経歴証明書」を提示すると、バスやモノレールは半額になる。10%の割引を実施しているタクシー会社もある。
 大事なことは、高齢者が無理に運転しなくても済む社会づくりだ。巡回バスや安価で乗れるタクシーなどの公共交通手段の拡充、移動販売や小売店の宅配サービスなど策はある。高齢化社会の課題を認識し、地域と行政、企業が連携して取り組むべきだ。