<社説>西普天間土地評価 基地跡地利用に禍根残すな


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 米軍基地の跡地利用は地権者の理解と協力が成否を左右する。土地の取得に当たっても、地権者に不信感や不利益を与えるような行為があってはならない。

 宜野湾市が2014年、米軍キャンプ瑞慶覧・西普天間地区の返還前に土地を先行取得する際、宅地見込地は返還後、県道沿い以外は評価額が下がると地権者に説明していた。市は同年、1平方メートル当たり3万8500円で土地を買い取った。
 ところが医学部付属病院の移転を予定する琉球大学は今月、1平方メートル当たり4万4200円~9万5500円を提示した。最大で市の単価の約2・5倍である。市の説明に応じて土地を売却した地権者は不利益を被ることになる。
 区画整理事業による評価を加味していなかったというのが市の説明だ。しかし市は13年、区画整理事業の導入方針を市議会で示しており、市の説明には疑問が残る。
 改正前の跡地利用推進特別措置法(跡地法)は、地権者が税控除を受けられる土地の先行取得は返還前に限定しており、市は対応を迫られた。しかし、評価額が下がるという説明が誤解を与え、地権者に売却を急(せ)かしたことは否定できない。
 跡地法に基づく基地跡地利用について内閣府は区画整理事業が「一定程度前提にある」としている。区画整理事業による評価を加味しないまま評価額が下がるとした市の説明は、跡地法の規定に照らしても配慮に欠けたと言えよう。
 琉球大の提示額の差額について地権者の間で不満が出ているという。市はなぜそのような説明をしたのか経緯を明らかにし、説明責任を果たすことで地権者の疑問や不満を払拭(ふっしょく)すべきだ。このままでは西普天間地区の跡地利用で大きな禍根を残すことになる。
 市の中心部に米軍普天間飛行場を抱え、効果的な土地利用ができなかった宜野湾市にとって、西普天間地区は西海岸地区と並んで市活性化の重要拠点となる。円滑な跡地利用を進めるためには地権者の合意形成に基づく共同歩調が不可欠となる。
 これは西普天間地区に限らない。今後、返還が待たれる浦添市の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)なども同様に、地権者の信頼関係に基づく用地交渉なくして、望ましい跡地利用は約束されない。
 沖縄の将来像を描くための重要事業だ。西普天間地区はそのモデルケースを目指してほしい。