<社説>南西石油退職者 全員の再就職に万全期せ


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 ブラジル国営石油会社ペトロブラスによる南西石油売却に伴い、従業員86人の希望退職が決まった。

 沖縄労働局をはじめ県、西原町、南西石油など関係機関は、退職者全員の再就職実現に万全を期してほしい。
 南西石油はエッソスタンダード沖縄として1968年に設立された。製油所建設のため埋め立て免許の交付を受け、72年に西原製油所の運転を開始した。日本復帰とともに南西石油へ社名を変更し、石油精製を続けてきた。2008年、親会社の東燃ゼネラルが保有株式をペトロブラスに譲渡した。
 その後、ペトロブラスは原油安と汚職疑惑で株価が下落し経営を圧迫した。ブラジルでの疑惑の余波で子会社の南西石油が売却され、従業員の雇用に影響が出るのは理不尽との感を禁じ得ない。
 南西石油は15年3月に精製事業からの撤退を決めて、同年5月には従業員に退職時の条件を示す予定だった。しかし、条件提示は延期を重ね、約1年半後の今年8月にようやく示した経緯がある。
 この間、従業員の中には将来が見通せず自主退職者が出るなど不信が広がっていた。
 同社が示した退職条件は、希望退職者の退職金に特別加算金を加えた措置や、専門業者との契約などの再就職支援、再就職に伴う引っ越し費用補助、健康保険料補助を含む。
 売却先の太陽石油は、南西石油が停止した精製事業は引き継がない。雇用は石油タンクを運営するターミナル機能に必要な従業員に限られる。そのため希望退職者の中には精製施設の運転業務に携わっていた従業員が含まれているとみられる。
 同じ業務形態で受け入れる企業が県内にないため、県外の同業社に当たるか、県内で新たな職種への就職に向けたマッチングが今後の課題だ。資格や技術取得の訓練などきめの細かい支援が必要になる。
 石油業界は少子化やエコカーの普及で需要減少に歯止めがかからず、国が業界に供給能力削減を求めている。JXホールディングスと東燃ゼネラル石油が来年4月の経営統合で最終合意するなど業界再編に向かっている。
 南西石油から事業を引き継ぐ太陽石油は、残された従業員の雇用安定に責任を持って経営に取り組んでほしい。