<社説>引きこもり 社会全体で手差し伸べよう


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 学校や大学、仕事に行けず、家族以外との関わりがないまま、社会から孤立してしまう。

 「引きこもり」の人たちのつらさは察するにあまりある。
 本人や家族の苦しみだけでなく、社会の損失でもある。引きこもりからの脱出に手を差し伸べる方策を社会全体で充実させたい。
 「引きこもり」の本人や家族らでつくる全国団体「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が、40歳以上で期間が10年を超える人たちの実態調査を始めた。引きこもった経緯や支援の有無などを調べる。
 当事者の苦悩に寄り添い、信頼関係を築いた団体による実態調査の意義は大きい。社会参加に結び付く具体策の提言を期待したい。
 内閣府は2015年12月に全国調査を実施し、ことし9月に15~39歳の引きこもりの人が約54万人に上るとの推計結果を公表した。10年の前回調査より約15万人減ったのは、支援策に一定の効果があった面もあろう。
 今回の調査ではっきりしたのは、引きこもりの長期化と高年齢化だ。7年以上が約35%と最多で、3年以上が約75%を占めた。10年の調査は「1~3年」が最多だった。30代後半で引きこもった人は10%で、10年調査から倍増した。
 ここ最近、過重な労働や職場の人間関係、病気がきっかけで引きこもる人が増えている。しかし、内閣府は40代の調査を実施しておらず、不備が指摘されていた。家族会連合会が40代を重点的に調査することで、年齢が高くなる実情やその要因がつかめるだろう。
 引きこもりは年齢が上がり、期間が長引くほど解決が難しくなると言われる。周囲が早い段階で気付き、支えることが重要だ。
 県が10月に開設した「ひきこもり専門支援センター」には、1カ月余で延べ110件の相談が寄せられ、37人がカウンセリングなどの相談支援を受けている。
 胸の内を聞いてもらうことで、社会との接点を持つ意欲が強まるケースが支援機関から報告されている。フリースクールへの入学や地域行事への参加、ボランティア活動を通して社会との接点を見いだし、引きこもりから抜け出せた人もいる。
 沖縄の相互扶助を表す「ゆいまーる」、痛みを分かち合う「肝苦(ちむぐり)さん」の精神を生かし、地域社会が本人や家族とつながり、後押しする沖縄モデルを構築したい。