<社説>平和センター捜索 不当な弾圧許されぬ 基地建設に警察が加担


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 警察の捜査は基地反対運動に対する弾圧である。沖縄平和運動センターなどの強制捜査と山城博治同センター議長の再々逮捕、長期の拘束は行き過ぎだ。警察法がうたう「公平中正」の理念に反すると指摘せざるを得ない。
 県警は基地反対、平和運動の拠点である同センターからパソコンなどを押収した。運動に関わる人々の情報が公権力に渡り、基地反対運動を委縮させる。捜索、押収の必要性に疑問がある。山城議長の長期拘束も同様だ。基地建設の国策に警察が加担する-そのような疑いを県民に抱かせた。県警への県民の信頼が大きく揺らいだ。

捜査の必要性に疑問

 警察の捜査には疑問点が多い。1月の事案に対する強制捜査と議長らの逮捕が、なぜ1年近くもたったこの時期なのか。
 辺野古新基地建設の反対運動を抑制する印象操作を疑う声は多い。建設を容認する県議会野党の自民党県議は「高江から辺野古に主戦場が移る。(辺野古の)工事が再開すれば反対運動も再燃する。警察活動は必要」とタイミングを見計らった捜査と見ている。
 米軍基地ゲート前の路上にブロックを積み上げた威力業務妨害容疑が捜査の目的とされる。警察の目前で公然となされ、行為と関係者を特定する証拠は明白だ。その立件のため議長らを逮捕し、平和運動センターの資料を押収する必要性があるのか。
 県警は「被疑者特定と裏付け捜査に時間がかかった」と説明するが、大量の資料押収への疑念は拭えない。
 ブロック積み上げの立件だけでなく、辺野古新基地、北部訓練場ヘリパッド建設の反対運動、関係者の広範な情報収集が目的ではないか。今後の反対運動への対応も視野に入れた予備的な警察活動との疑念が増幅する。
 山城議長の40日以上に及ぶ拘束も問題だ。器物損壊など軽微な容疑に対する長期拘束は捜査の必要性、人権の問題と同時に、基地反対運動への影響が大きい。
 多くの弁護士、大学教授ら法律専門家が強制捜査の必要性の乏しさを指摘し「表現の自由、政治活動の抑圧」と見ている。反対運動の委縮を狙った強制捜査と疑われている。基地建設を強行する政府と反対する県民の間に立ち「公平中正」に職務を執行すべき警察活動のバランスを失している。そのように見られているのである。
 一方、高江ヘリパッド工事の取材で新聞記者2人が機動隊に拘束、排除された件は隊員の処罰や謝罪もなく不問に付されている。その点でも警察の対応はバランスを欠いている。

基地反対は正当な権利

 政府と警察の一体化を危惧する。昨年の警察法改正で警察の任務に「内閣の重要政策を助ける」ことが付加された。辺野古新基地建設などが「内閣の重要政策」に位置付けられてはいないか。少なくともその先駆けである疑いを、ヘリパッド抗議の徹底排除を含めた一連の警察活動は抱かせる。
 弁護士らは警察の対応を「米軍施政下よりひどい」と批判している。政府の国策を警察が補完する「警察国家」の危険な兆候と懸念する識者もいる。
 政府は辺野古新基地建設、沖縄への基地集中政策を「普天間の危険除去」や「沖縄の地理的優位性」など安全保障上の理由で正当化している。しかし「国益」の名の下に沖縄に基地過重負担を押し付け続けているのが実態である。県民は加害者ではなく被害者だ。
 被害を受ける県民が基地過重負担の軽減、新基地・施設に反対を訴えるのは正当な権利だ。民主主義、地方自治に基づく正当な権利主張、基地反対の行動を政府と警察が一体となって弾圧することは許されない。
 米軍基地撤去は県民にとって長く苦しい闘いだ。しかし正義は沖縄側にある。政府や警察の不当な対応に屈することなく、粘り強く闘い続けるしかない。

英文へ→Editorial: Police investigating the Peace Center and supporting the base construction — unjust oppressions are unacceptable