<社説>知事「容認」否定 県内移設ない返還計画を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄県にとって米軍北部訓練場の部分返還自体は歓迎すべきことで、異議を申し立てにくい。たとえ「返還」の陰に基地機能強化の針が隠れていても。そこを政府は突いてきた。

 翁長雄志知事が11月28日のインタビューで北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設について「苦渋の選択」と述べ、事実上容認したと報じられた。2日に再説明し、「ヘリパッドは容認できない」と容認報道を否定した。しかし、反対するとは明言しなかった。
 歯切れの悪さは、ヘリパッドに反対することで、北部訓練場を含めた在沖米軍基地の返還を定めた日米特別行動委員会(SACO)最終報告をほごにされかねないという懸念があるからだろう。
 SACOでは、北部訓練場の部分返還は新たな6カ所のヘリパッドを建設するのが条件だ。ほかに嘉手納より南の基地の返還も含まれ、県は返還に向けSACOが現実的で実現可能としている。ヘリパッド建設に反対すると、日本政府が「沖縄県がSACO合意を否定するのか」と脅してくることも想定される。
 日本政府から見れば、沖縄の負担軽減の名の下に、米海兵隊が「約51%の使用不可能」とするエリアを返還して、在沖米軍の占める面積を減らせる。政治的には、翁長知事の支持基盤「オール沖縄」内でヘリパッド反対派と県政に亀裂を与えられる。
 2日に知事は「SACO合意とのはざまで苦渋の選択をするということ」と述べている。返還と基地機能強化とのはざまに立ち、ヘリパッドに反対するよう求める与党や県民の声にも苦悩しているだろう。
 しかし、新設されるヘリパッドはSACO合意時は明らかにされていなかった米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイが利用する。ヘリパッドは東村高江集落に近すぎ、生活環境や自然への負荷は大きい。前提条件が変わっているのだ。県は前提条件が変わったことでSACO最終報告にある「沖縄県民の負担を軽減し」という目的に反すると主張すべきだ。
 県が北部訓練場の新たなヘリパッドにノーを突き付けない限り、「返還」を人質にした基地機能強化は今後も進められる。知事はヘリパッド建設に反対し、県内移設を前提としない、新たな返還計画を日米両政府に求めるべきだ。