<社説>8氏に新報教育賞 個性磨く姿勢に学びたい


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 児童生徒の可能性を引き出すことに情熱を注ぎ、力強く生きる力を育む。「教育の力」を発揮する教師は、かけがえのない存在である。深く感謝したい。

 第2回琉球新報教育賞は、教育現場で真摯(しんし)に子どもたちと向き合い、意欲的な研究に取り組み、創意工夫を凝らす8氏が受賞する。
 下地なを美氏(那覇市立天久小教諭)、上原秀樹氏(八重瀬町立東風平中教諭)、渡久地愛子氏(伊江村立西小教諭)、比嘉ゆり子氏(名護市立屋部中教諭)ら受賞者に共通するのは児童生徒に寄り添う姿勢である。
 大切にするのは「子どもたちの目線」(下地氏)であり、「型にはまらず、作品作りをしてほしい」(上原氏)と生徒の感性を尊重することである。「技術よりも一人一人の子どもに向き合うこと」(渡久地氏)を基本にし、「時間はかかるが、コミュニケーションをしながら引き出していく」(比嘉氏)ことで、子どもたちは輝きを増していく。
 個性を生かし、磨く取り組みが、子どもたちの豊かな感性を刺激する。自ら考え、創造する力を伸ばす各氏の児童生徒との向き合い方に、教育のあるべき姿が見える。
 佐久間洋氏(沖縄市立比屋根小教諭)と松田美奈子氏(沖縄市立美東中教諭)は、NIE(教育に新聞を)の実践を通して学力向上、子どもたちの思考力・判断力の育成に取り組んでいる。
 「子どもたちにコミュニケーション能力が付いて学習意欲も湧く」(佐久間氏)、「学んでいることと社会のつながりが分かり、学びに深みが増す」(松田氏)と言う。新聞活用を全県に広げたい。
 上唐由紀子氏(中部農林高教諭)と田村正人氏(前原高教諭)は沖縄に誇りを持たせることで、生徒の意欲をかき立てた。
 上唐氏はブランド豚「チャーグー」を利用した加工品などを生徒と共に作ってきた。「いろんな生徒がいるので、視野が広がる」との言葉は信頼関係の証しだ。そんな教師の存在が生徒の心の成長を促すのである。
 田村氏は空手道を学校スポーツとして定着させた。「活躍する場をつくり、自信と誇りを持ってほしい」との思いに、生徒たちが応える。何事にも生き生きと打ち込む生徒たちの姿が目に浮かぶ。
 8氏の教育活動には人を育てる教育の神髄が宿る。保護者も地域も、その姿勢に学びたい。