<社説>朴大統領弾劾可決 憲法裁審判待たず辞任を


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 韓国国会は朴槿恵(パククネ)大統領の弾劾訴追案を可決した。朴氏の親友による国政介入疑惑は国家トップの不在という異例の事態に発展した。

 民主化以降、最大規模の退陣要求集会を繰り返した民意が政治を変えたといえる。国民の支持を失った朴氏は速やかに退陣し、大統領選挙を実施してトップ不在の長期化を避けなければならない。
 朴氏は「国民を幸福にする政治」を掲げて女性初の大統領に就任した。朴氏の親友、崔順実(チェスンシル)被告による国政介入疑惑は、検察が現職大統領の犯罪を認定する前代未聞の事態となった。検察が明らかにした構図は大統領が自らの権威をかさに大企業に金を無心したというもので、政経癒着を背景にした権力犯罪だ。
 弾劾の訴追理由は2014年の旅客船セウォル号沈没にも触れている。事故当日、朴氏が憲法が定める国民の生命を守る義務を果たさなかったと指摘した。
 弾劾で職務停止となった大統領を罷免するかどうかは憲法裁判所が180日以内に判断する。朴氏は閣僚らとの会合で「私の不徳と不行き届きにより国家的混乱を招き、国民の皆さんに申し訳ない」と陳謝したが、早期退陣の意思がないことを改めて示した。しかし、韓国国会で弾劾に賛成は8割弱に上り、与党セヌリ党議員も約半数が賛成した。これは大統領辞任決議に等しい。
 国家のトップ不在は、国民生活や経済だけでなく、北朝鮮の核・ミサイル開発問題への対応や歴史問題がくすぶる日韓関係にも影響する。朴氏はもはや大統領の席に執着するのではなく、憲法裁判所の審判の結果を待たずに辞任すべきである。
 朴氏を職務停止に追い込んだのは市民の力だ。10月下旬の疑惑発覚後、韓国全土で集会が開かれた。12月3日には主催者発表で計232万人が参加し、1987年の民主化後最大の規模となった。主催組織は1500を超える市民団体で構成される。市民は大統領と親友の女性が国家を私物化したことに失望し、怒った。暴力に訴えない平和的な抗議行動は韓国の民主主義の成熟を示している。
 韓国の政局は次期大統領選に向けて与野党の駆け引きが本格化するとみられる。不正腐敗に毅然ととした態度で臨み「今度こそ国民を幸福にする」指導者が選出されることを期待する。