<社説>知事返還式典欠席 負担軽減にならず当然だ


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 うわべだけの「負担軽減」を演出する芝居に、なぜ沖縄県の代表が出席しなければならないのか。22日に名護市で開催される米軍北部訓練場の返還式典に翁長雄志知事らを招待した政府の見識を疑う。

 翁長知事が、県として欠席を表明したのは当然だ。知事は「SACO(日米特別行動委員会)合意になかったオスプレイが環境影響評価を行うことなく飛行し(ヘリパッド工事での)自衛隊ヘリの投入や工期の一方的な短縮など、政府の姿勢は到底容認できない」と理由を挙げた。知事の言い分はもっともだ。
 北部訓練場の総面積約7800ヘクタールのうち過半に当たる約4千ヘクタールの返還は、復帰後最大規模である。返還で県内の米軍専用施設面積は約17%減り、国内にある米軍専用施設の沖縄への集中度も約74%から約70%になる。
 約4千ヘクタールという面積は確かに広大だが、集中度はわずか4ポイント減るにすぎず、沖縄の過重負担は全く軽減されない。数字の上で「負担軽減」と見せかけているが、内実は基地機能の強化、負担の増加にすぎないからだ。
 1996年のSACO合意では、北部訓練場の返還には新たな土地と水域の提供、ヘリパッドの移設が条件となっていた。
 結局は米軍にとって不要な部分を返し、新たに獲得したヘリパッドによってオスプレイの運用を効率化する基地再編にすぎない。無理やり土地を奪われた歴史を考えれば、これほど理不尽な話はない。
 しかも東村高江周辺は集落を取り囲むようにヘリパッドが建設される。騒音や墜落の危険が増えることはあっても減ることは絶対にない。宜野座村や金武町では地元の反対に耳を傾けず、オスプレイが危険なつり下げ訓練を民間地上空で実施する。北部訓練場の過半が返還されるからといって「負担軽減」と感じる状況は沖縄のどこにもない。
 果たして返還式典は、誰のために何を祝うのか。2013年4月28日、沖縄にとって日本から切り離された「屈辱の日」に、安倍政権は「主権回復の日」式典を挙行した。今回と共通するのは、沖縄の歴史、住民感情への配慮が欠落していることだ。
 北部訓練場過半の返還による「負担軽減」はまやかしでしかない。知事不在の式典で、政府が「負担軽減」をアピールするのであれば、県民の反発を招くだけだ。