<社説>17年度沖縄予算 振興目指し活用を 額ありきでなく事業進めよ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄関係予算ほど政治の力学で語られる予算はないだろう。

 2017年度沖縄関係予算は、国が県に毎年3千億円台を約束した14年度予算以降では最も低くなった。
 県市長会の古謝景春会長(南城市長)は「基地問題と減額との関連も疑わざるを得ない」と述べた。県民には大田県政の末期に「県政不況」と言われた予算減額、仲井真県政での3千億円台の予算増額の記憶がこびりつく。
 しかし、仮に在沖米軍基地への県の姿勢を減額の理由にすれば、国の財政規律に大きく反し、本来の予算の目的である沖縄振興の原則をゆがめる。

 繰り返されるリンク論

 17年度の沖縄関係予算は16年度当初予算比200億円(6%)減の3150億円となった。減額は2年ぶりで、今夏の概算要求よりも60億円減らした。
 政府は公式には否定するが、沖縄関係予算と基地問題を結び付ける、いわゆるリンク論は政府高官から繰り返し出されてきた。
 鶴保庸介沖縄担当相は10月、県関係の自民党国会議員のパーティーで「県選出の国会議員の先生方に必ず選挙で勝利してもらわなければならない。振興策とリンクしている」と発言した。8月には、菅義偉官房長官が名護市の新基地建設に伴う普天間飛行場の跡地利用と予算額を関連付けて「工事が進まなければ予算が少なくなるのも当然ではないか」と述べた。
 沖縄関係予算を、選挙や新基地建設への協力の見返りとするような発言だ。沖縄関係予算は沖縄の特殊事情を鑑み、沖縄振興特別措置法に基づいて組まれるものだ。菅氏や鶴保氏の発言は法の趣旨に反する。
 17年度予算減額の主な要因は沖縄振興一括交付金の減少だ。一括交付金は産業振興や人材育成、離島活性化などソフト事業向けが118億円減の688億円、道路や港湾整備などハード事業向けが137億円減の670億円となり、併せて255億円(16%)減額され、計1358億円となった。制度が創設された12年度予算以降で最も低い額だ。
 内閣府が減額の理由として挙げたのは不用額や繰越金が多いということだ。「予算を使い切っていない」という理屈である。
 夏の概算要求段階で県内の他の国庫支出金事業の繰越率を勘案して計算し、ソフト事業向けは前年度比138億円減の668億円で要求した。
 しかし、内閣府の算定に財務省から異論が出た。

 一括交付金の練度

 財務省はソフト交付金の使途が広いため、使途が特定される国庫支出金ではなく、歳出全体のデータを勘案するべきだと判断した。全国の3年間の繰越額を比較して計算し直した。そのため内閣府の概算要求よりも20億円も多い異例の形となった。
 内閣、財務で算定がぶれるのも、一括交付金が創設わずか5年で、かつ沖縄でのみ適用される制度だからだ。導入初年度の12年度は新制度への不慣れや事業決定の遅れから予算の43%を繰り越した。だが、年々繰越額は減少し、15年度は17%になった。本紙アンケートでは県内41市町村長全員が一括交付金を「評価する。継続すべきだ」と回答した。既存の国庫補助金でできない住民サービスに活用できることが理由だ。
 しかし、他に類のない制度であるだけに、増減の解釈が随意であるという側面は見逃せない。増減が政治で決められる状況が生まれないよう、県も事業遂行の練度を高める必要がある。
 17年度予算は本来論じられるべき沖縄振興のため、予算をどう使うかという中身の審議が見えず「額ありき」に終始した感がある。
 沖縄振興特別措置法は17年度に5年目の折り返しとなる。額の増減に一喜一憂するのではなく、法の趣旨に基づいて真に沖縄振興のために予算を活用すべきだ。