<社説>出生数100万人割れ 実効性ある子育て支援を


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 1年間に生まれる赤ちゃんの数が100万人を割った。厚生労働省が公表した2016年の人口動態統計の年間推計によると、出生数が前年より約2万5千人少ない98万1千人となった。現在の形で統計を取り始めた1899年以降、大台を割り込むのは初めてだ。

 人口減少時代の進行が目に見える形で示された。経済活動の縮小、社会保障制度の維持など危機がより高まったといえる。政府は現在の少子化対策にとどまることなく、より実効性ある方策を打ち出すべきだ。
 20~30代の出産世代とされる女性の人口が減少しているほか、平均初婚年齢が男性31・1歳、女性29・4歳とこの20年で3歳前後上がった晩婚化が少子化の背景にあると厚労省は分析している。
 確かに国民の生活様式や意識の変化によって少子化が進んだ側面もあるだろう。
 国立社会保障・人口問題研究所が15年に実施した調査によると、夫婦が理想とする子どもの数は2・32人なのに対し、実際の子どもの数は1・68人にとどまる。
 理想に届かないのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が56・3%で最も多かった。中でも30~34歳は81・2%、30歳未満は76・5%と高い割合だ。
 調査から見えてくるのは「産みたいけれど、育てる経済的余裕がない」という若年層の嘆きだ。
 17年度予算案で、政府は子育て支援や働き方改革を後押しする施策に重点を置いた。
 だが予算の中身は本当に対策としてふさわしいものか。待機児童解消に向けて保育所などの受け皿を約4万6千人分増やし、保育士の給与を上げ、2人目の子どもの幼稚園・保育園の保育料を無料にすることなどが目玉だ。こうした政策は評価できる面もあるが、まだ不十分と言わざるを得ない。
 例えば保育士給与は中堅役職を設け3人に1人が約4万円上がるとされる。厚労省によると、14年の保育士の月収(税込み)は21万6千円で全職種平均の32万9千円を大きく下回る。これで「魅力ある職場」として人材を確保できるのだろうか。
 家族に関連する政府支出の対国内総生産(GDP)比は、英国の3・81、フランスの3・20などに対し、日本は1・35にとどまる。政府は予算規模の拡大を含め、子育て支援、少子化対策にさらに力を入れるべきだ。