<社説>米艦防護運用開始 米国の戦争への加担やめよ


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 米軍など他国軍の艦艇を防護し、場合によっては武器を使用するという新たな任務を自衛隊が担うことになった。他国の軍事行動に日本が加担する必要があるのか疑問だ。

 政府は、自衛隊が平時から米国の艦艇などを守る「武器等防護」の運用指針を決めた。北朝鮮による弾道ミサイル発射への警戒監視活動などで米軍と連携する。自衛隊と米軍の運用の一体化が加速する。
 南スーダンに派遣されている陸上自衛隊に対し「駆け付け警護」の任務が付与されたのに続く、安保法に基づく自衛隊の海外任務の拡大だ。
 安倍政権下で「国のカタチ」は大きく変わった。憲法の解釈変更と安保法で集団的自衛権の行使が可能となった。国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊の活動範囲が拡大し、危険度が増した。
 稲田朋美防衛相は記者会見で「日米同盟の抑止力、対処法が一層強化され、わが国の平和と安全がより確保される」と述べた。
 しかし、米軍などの艦艇を守る活動が「日本の平和と安全」を確保するとは言い難い。むしろ、海外の軍事紛争に自衛隊を巻き込む危険があるとみるべきだ。
 自衛官が弾薬や艦船、航空機などを守る「武器等防護」は従来、自衛隊が攻撃を受ける場合に限って武器使用が可能だった。
 それが安保法の施行で米軍など他国の軍隊にもその対象を広げた。運用指針では日本の防衛に資する活動に従事する軍隊の武器を防護するため、必要最小限度の武器使用を認めるとしている。
 問題となるのは、日本の防衛に資する活動の範囲だ。運用指針は(1)弾道ミサイルの警戒を含む情報収集・警戒監視活動(2)重要影響事態の際の輸送・補給(3)共同訓練-を挙げるが、米軍の都合で活動範囲がなし崩し的に拡大する可能性は否定できない。「必要最小限」どころか、際限ない武力行使に引きずり込まれるのではないか。
 実施の可否は米軍などの要請を受けて防衛相が判断する。しかし、防衛相が主体的に判断できるような余地があるのか疑問だ。結局は米軍の言うがまま、海外での共同軍事行動を強いられる恐れがある。
 日本は平和国家の理想像を放棄し、着々と「戦争ができる国」への転換を進めている。このままでは、日本は再び海外の紛争で多大な血を流す国になる。今こそ歯止めをかけるときだ。