<社説>九州知事アンケート 基地問題への逡巡打開を


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 「沖縄の基地負担軽減」に理解を示し、全国的な議論にも賛同する。しかし「防衛問題は国の専管事項」の固定観念を脱せず、地元への「基地引き受け」には消極的。九州7県知事アンケートから、そのような姿勢がうかがえた。

 アンケートは福岡市の市民団体「ローカル・マニフェスト推進ネットワーク九州」が行った。「日本全体で負担を分かつべきか」「全国知事会の役割は」などの設問で、沖縄の基地負担軽減を他県の市民団体が提起したことを歓迎したい。
 これに答えて「国民全体の課題として議論すべきだ」(長崎)、さらに鹿児島、宮崎、大分などが全国知事会での積極的な議論を促した。沖縄基地問題を全国の問題として議論し、政府に解決を求める意見に意を強くした。
 一方、「防衛問題は国の専管事項」(熊本)、「安全保障は国の責務」(佐賀)として発言に慎重な姿勢も垣間見えた。
 「日本全体で負担を分かつべきだ」に賛同したのは大分のみ。同県は米軍実弾射撃演習の沖縄からの移転を受け入れている。
 沖縄の負担軽減に積極的に関与すると「負担の一部が配備される可能性が高い。基地問題に関わりたくない姿が浮き彫りになった」と識者は分析している。
 防衛省は佐賀県への陸自オスプレイの配備を計画し、在沖米軍オスプレイ訓練の移転も想定している。「負担の分担」に賛同すると政府は「ご当地で受け入れを」と言い出しかねない。同じ事情で全国の自治体が、沖縄の基地負担の分担に消極姿勢を見せている。
 沖縄の基地負担軽減に「総論賛成」ながら、地元への受け入れや積極的な関与は逡巡(しゅんじゅん)する。それをいかに打開するかが問われている。
 昨年末の最高裁判決は、辺野古埋め立て承認を翁長雄志知事が取り消したことを違法と判断した。
 知事判断より国策を優先する判決を、法律や地方自治の専門家は「地方自治の否定」と批判し、「問題は全国に波及しかねない」と指摘している。
 民意を無視する国策の押し付けは地方自治の危機である。「明日はわが身」の共通認識をいかに全国の自治体に広げるか。全国知事会への働き掛けなど、これまで以上の取り組みを県に求めたい。
 基地問題ほか地域の諸課題について、政府に物申す全国自治体の連携強化の機運を高めたい。