<社説>精神科長期入院削減 患者の望む支援不可欠だ

 厚生労働省は統合失調症などで精神科に1年以上長期入院する患者を、2020年度末までに全国で最大3万9千人減らす目標を決めた。

 14年現在の長期入院患者は18万5千人に上る。目標を達成できれば、最大でその5人に1人が退院することになる。社会復帰を希望する人の後押しにもつながる。
 その一方で、解決すべき課題は多い。04年にも厚労省は約7万人を約10年かけて退院させ、その分の病床を減らす方針を掲げた。だが、調査した02~14年に減ったのは約1万8千床にとどまった。
 その時と比べ、社会の理解などは進んだとは言い難い。訪問医療に手が回らない現場の状況も改善されてはいない。目標達成の障害となった多くの課題を解消するためには、実効性ある施策の充実と着実な実行が必要である。
 厚労省は退院した人が社会で安心して暮らせる「地域包括ケアシステム」の構築を目指す。少人数で生活するグループホームなどを整備し、地域社会で暮らせる人を増やす方針だ。
 患者らが望む幅広い支援を提供することが不可欠である。患者と見守る家族が抱く退院後の不安解消を重視し、患者の視点に立って取り組んでほしい。
 厚労省には都道府県や患者団体と連携し、患者のニーズに応じた適切かつ幅広い支援体制を構築する責務がある。
 参考になる先駆的な取り組みがある。大阪府は00年に長期入院を解消する事業を実施した。退院した患者への面接調査で、8割以上が訪問看護などのケアを受けながら地域生活を継続し、現在の生活に「満足」と回答したという。退院後のケアが成否の鍵を握るのである。
 入院医療から地域生活を中心とした精神医療への転換は喫緊の課題である。入院よりも訪問医療などにより多くの診療報酬を配分することや福祉専門職、医師、看護師などの人材確保を求めたい。
 加えて社会の偏見解消が必要だ。退院には住居の確保が重要だが、一般住宅では入居拒否が多いという。グループホームなどの整備も目標通りには進んでいない。
 さまざまな課題を乗り越え、当事者の自立を社会全体で支えたい。その実現は国民一人一人の責務であることを深く自覚したい。