<社説>天皇退位問題 開かれた国民的な論議を

 天皇陛下が希望する生前退位について政府内に、2019年1月1日に皇太子が新天皇に即位し、同日から新元号に移行する案が浮上している。

 高齢により象徴天皇の務めを「全身全霊で果たすことが難しくなる」と案ずる陛下の思いを慮(おもんぱか)り、皇位継承の作業を急ぎ進めたいというのが政府の考え方であろう。
 退位を巡る有識者会議、専門家のヒアリングでは、象徴天皇としての公務に勤しみたいというご自身の思いと体力の限界に配慮して生前退位を容認する意見の一方、「天皇は存在自体が重要で、生前退位は権威をおとしめかねない」などと反対、慎重な意見が示されている。
 陛下自身は昨年8月のメッセージで、憲法が定める象徴天皇の役割として、国内各地に出向いて国民に接し、「国民と共にある」天皇像に強い思いを示されていた。
 メッセージを受けた緊急世論調査では「生前退位容認」が86%と賛同する意見が圧倒的に多く、現天皇一代に限らず、「恒久的な制度設計」を求める意見も76%と多数を占めた。
 戦前の旧憲法下の天皇は絶対的な権力者として皇室の奥に存在していたが、戦後憲法下では「国民統合の象徴」として積極的に国民の前に姿を現し、親しく国民に接してきた。
 世論調査が示す「生前退位容認」の多さは、そのような「国民と共にある」天皇像、「開かれた皇室」を国民が受け入れ、定着していることの表れだろう。
 生前退位に否定的な論者は「退位せず国事行為を代行する摂政を置いて負担を軽減する」など、「終身天皇」へのこだわりをうかがわせる。
 しかし摂政論は「国民と共にある」象徴天皇の在り方から、戦前の権威、権力の中心としての天皇像へと回帰させることになりはしないか。
 陛下は13年の傘寿を迎えたお言葉で「日本は、平和と民主主義を守るべき大切なものとして日本国憲法を作り、今日の日本を築いた」と、戦後の平和憲法を尊重する意向も示されている。
 安倍政権下で憲法改正の足音が高まるのと軌を一にして、天皇退位問題が論ぜられている。
 象徴天皇の在り方について、戦後の民主憲法の成り立ちを含め、国民に開かれた論議を求めたい。