<社説>覚醒剤密輸 水際の防止体制強化を


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 県警と沖縄地区税関などは、覚醒剤を密輸しようとしたとして、台湾籍の男ら6人を覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)の容疑で逮捕した。

 急増する外国クルーズ船を使った犯罪で、今回の摘発は氷山の一角かもしれない。四方を海に囲まれた沖縄が違法薬物の中継基地として狙われている可能性がある。密輸ルートの全容解明と、水際で防止する体制の強化を求めたい。
 押収された覚醒剤は合計で10キロ以上になるとみられ、末端価格では約7億円以上に相当する見込みだという。6人のうち3人は、昨年12月下旬にクルーズ船で沖縄を訪れた際に、那覇港で税関検査によって覚醒剤を隠し持っていたのを発見され逮捕された。今回逮捕された3人は先に県内に入っていて県外へ逃亡していた。3人が県外へ逃走する過程で、押収されていない覚醒剤が国内に入った可能性もあるという。
 全国の警察が昨年1~6月に摘発した覚醒剤密輸事件の押収量は771・7キロで、前年同期の約6・5倍となり大幅に増えた。船舶同士が海上で受け渡す「瀬取り」や、国際宅配便を利用するなど手口の巧妙化やルートの分散化が進んでいる。
 昨年5月、那覇港に寄港したマレーシア船籍のヨットから597キロ、末端価格約420億円分もの覚醒剤が押収された。一度に押収された覚醒剤の量としては国内過去最大だった。ヨットは台湾を出港後、石垣港にも寄港していたが摘発されなかった。
 水際で摘発できなかった背景の一つに税関の人員不足がある。総合事務局によると、2016年のクルーズ船の寄港(見込み)は457回。15年の219回に比べ倍増している。一度に数千人が下船するクルーズ船の乗客を全て入国検査するには体制が不十分だ。
 政府は昨年9月の閣議で、訪日外国人旅行者の急増などに対応し、各地の税関の職員を本年度中に計79人緊急増員すると決めた。このうち、クルーズ船の寄港増に対応するため、福岡、鹿児島、沖縄の3県にある植物防疫所と動物検疫所の職員を増員する。
 沖縄を反社会的勢力による取り引きの中継地点にさせてはならない。観光立県を掲げる沖縄こそ、税関の人員の拡充に早急に取り組む必要がある。