<社説>通知なし降下訓練 責任は容認する政府にある


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 県民の人命軽視も甚だしい。米空軍は県やうるま市への通知もなく、同市津堅島訓練場水域でパラシュート降下訓練を実施した。

 米軍に強く抗議し、パラシュート降下訓練の廃止を要求する。
 13日付琉球新報は米軍機から次々と降下するパラシュートの写真を掲載した。パラシュートは七つ。米兵だけでなく、ボートと見られる物資も降下させていた。
 訓練の最中、周辺海域を漁船や民間の船舶が複数航行していた。国内最大のモズク養殖の海域であり、日常的に漁船が操業している。そのような「生活の海」に、事前通知もなく空から米兵や物資が降下する。断じて許すことはできない。
 県民が想起するのは日本復帰前の1965年に読谷村で、米軍がパラシュートで投下したトレーラーが民家に落下し、小学5年の女児を圧死させた事故だ。
 米軍はうるま市海域で強行する降下訓練で、これまでもボートを投下している。復帰前と同様の重大な人身事故が再発しかねない。
 米軍は嘉手納基地でも17日に「高度3千メートル以上の上空から複数の投下訓練」を計画していた。兵員か物資かは不明だ。
 同基地周辺は住宅が密集している。3千メートルもの高度からの投下、降下は風に流され基地外の住宅地区に落下する危険性が大きい。
 伊江村では10日にパラシュート降下の米兵が米軍施設外の畑に降下した。同村の米兵施設外降下は本年度だけでも2件目だ。
 降下訓練だけでなく東村、宜野座村、金武町ではオスプレイの物資つり下げ訓練も実施されている。
 これらの米兵・物資の降下、つり下げ訓練に県、地元市町村は抗議し反対しているが、米軍は耳を貸さずに訓練を強行し、日本政府が容認しているのが実態だ。
 県内の米軍のパラシュート降下訓練は、基地負担軽減を名目にしたSACO(日米特別行動委員会)合意で読谷補助飛行場から伊江島補助飛行場に移転された。
 県や訓練が強行されるうるま市、嘉手納町などは、全ての降下訓練が伊江島に集約されたと理解しているが、米軍は「海域での訓練は認められている」と主張する。その米軍の主張を政府は容認しているのである。
 改めて全ての降下、つり下げ訓練の廃止を要求する。狭い沖縄では危険すぎる。万一の事故の責任は容認する日本政府にある。