<社説>副知事口利き疑惑 第三者委員会で解明せよ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 疑惑が完全に払拭(ふっしょく)されたとは言いがたい。

 安慶田光男副知事が、2015年の教員採用試験で特定の受験生を採用するよう口利きしたとの疑いが持たれている。県教育庁の幹部人事でも複数の人物の名前を挙げて登用を依頼していた疑いもある。登用依頼は副知事の権限を越える行為だ。
 安慶田副知事は20日「口利きの事実はない」とあらためて否定した上で「進退の問題にならない」として副知事職を続行する考えを示した。
 翁長雄志知事も定例記者会見で「副知事から確認したところ働き掛けの事実はないと聞いている」と述べ、疑惑の事実はないとの判断を示した。
 平敷昭人県教育長は「前教育長と前の統括監2人、前の参事2人の計5人に電話で確認したところ、働き掛けの事実はないとの返事をもらった」と述べ、教育庁の幹部人事への要請もなかったとの調査結果を明らかにした。その上で県教育庁として疑惑はないと判断し、今後は調査しない考えを示した。
 翁長知事、安慶田副知事らの一連の説明では県民は納得しないだろう。これで幕引きとすれば県政への信頼を揺るがし、翁長知事の任命責任も問われよう。疑惑を解明するために、客観的に判断できる第三者委員会を開くべきだ。
 不正を通報・告発した人が勤務先から解雇や降格といった不利益な扱いを受けないようにする公益通報者保護制度の活用も検討してもらいたい。
 副知事職は地方公務員法が定める「特別職」に当たる。このため、違反すると懲戒処分などの対象となる県職員の倫理規定や、一部を除く地方公務員法の規定からは除外されている。地方自治法で知事を「補佐し、その命を受け政策および企画をつかさどり、その補助機関である職員の担任する事務を監督し、別に定めるところにより、知事の職務を代理する」と定めている。
 このように強い権限が与えられているからこそ、高い倫理観、責任感、判断力、そして説明責任が求められる。
 県内の教員採用試験は、毎年全国でも高い倍率だ。特定の受験者の合格働き掛けの疑いが解明されないままでは、採用試験への信頼性を失ってしまう。開かれた県政を目指す翁長県政の真価が問われている。