<社説>海兵隊ヘリ不時着 防止策は普天間即時閉鎖だ


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 米軍機が沖縄の空を飛び交う限り、事故にいつ県民が巻き込まれかるか分からない。その危険性が改めて示された。日々の基地運用が住民生活を脅かし、「負担軽減」を全く実感できない基地の島の現実である。

 安倍晋三首相が施政方針演説で、北部訓練場の4千ヘクタールの返還や米軍属の扱い見直しを挙げ、「(沖縄の)基地負担軽減」を喧伝(けんでん)してからわずか6時間後の事故だ。
 20日夜、うるま市の伊計島に普天間飛行場所属の米海兵隊の攻撃ヘリAH1Zが不時着した。現場は島の集落中心部から約1キロ、リゾートホテルから600メートルしか離れていない。日中は農作業に従事する住民が多くいる地点だ。
 米軍側は飛行中に警告灯がつき、直後に着陸したとし、お決まりの「予防着陸」と強調している。「墜落」を「不時着」、「不時着」を「予防着陸」と言い張り、事故を矮小(わいしょう)化する体質も事故の遠因だ。
 同じ日の午後には、名護市のキャンプ・シュワブ上空で米軍ヘリが兵士5人をつり下げ、国道を横切って辺野古集落上空を飛行したことが目撃証言で明らかになっている。
 昨年12月13日、名護市安部の海岸にMV22オスプレイが墜落・大破した事故の記憶が生々しく残る。
 オスプレイが墜落して1カ月余。米軍の安全対策は実効性に乏しく、禁じられているはずの民間地上空でのつり下げを平然と実施する。組織全体の緊張感の欠如が安全対策の不備に直結しているのだろう。
 オスプレイの墜落原因の調査が終わらないうちに飛行を再開し、米軍は機体損傷につながった空中給油訓練も再開した。自衛隊機の事故であれば、到底あり得ない対応だが、安倍政権は米軍の意向に唯々諾々と従い、再開を認めた。
 事故の連鎖に歯止めがかからない要因に、米軍機への県民の強い不安と疑念に背を向け、運用を最優先する米軍の体質がある。弱腰に終始する日本政府の対応が拍車を掛けている。
 墜落や不時着などの異常事態のたびに、沖縄防衛局は県などに足を運んで形骸化した対応を説明するが、飛行中のトラブルは後を絶たない。メッセンジャーボーイのような対応はもう要らない。
 もはや、抜本的な再発防止策は普天間飛行場の即時閉鎖しかない。
 不時着したヘリは21日、普天間に戻ったが、不時着原因は判然としない。飛行は中止すべきである。