<社説>トランプ大統領就任 敵対ではなく融和の道を


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 トランプ第45代米大統領が誕生した。就任演説でトランプ氏は「権力を首都ワシントンからあなた方国民に返還する」と宣言した。そして「国家は国民に仕えるために存在する」「きょうの私の大統領就任宣誓は、全ての米国人に対する忠誠の誓いだ」と訴えた。

 国民主権を唱える演説部分については、何の異論も挟む余地はない。しかしトランプ氏が実際に進めようとする政策を見ると、強い疑問を抱くほかない。
 米国の利益を優先する「米国第一」主義の政策を遂行することを宣言した。「米国製品を買おう」と呼び掛けて保護主義を表明し「国境を守らなければならない」として不法移民の強制送還を進めるようだ。裏を返せば「米国第一」は米国さえよければ、ほかの国はどうでもいいとも聞こえる。
 米国は世界1位の経済大国であり、世界最強の軍事力を誇る超大国だ。米国が世界協調、国際秩序の構築の先頭に立たなければ、強い国だけが生き残る弱肉強食の荒涼とした世界が広がるだけだ。
 演説ではさらに「恩恵を享受する支配層」対「忘れられた庶民」、「利益をむさぼる外国」対「犠牲となる米国」という形で、さまざまな「敵」をつくり、国民の結束を呼び掛けている。単純な敵対関係を生み出して問題解決が進むとでもいうのだろうか。
 環境、経済、文化、平和維持など、1国だけでは解決できないほど各国は複雑に連関し合っている。国際的責務に背を向け、自由、民主主義、寛容といった建国以来の理念を捨て去るとしたら、米国は世界から孤立するだろう。
 米軍については興味深い指摘をしている。「米軍の嘆かわしい劣化を招いた」と言っている。沖縄では昨年、AV8Bハリアー戦闘攻撃機と垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが墜落した。米軍属で元米海兵隊員による女性暴行殺人事件も起きた。沖縄は「米軍の嘆かわしい劣化」の犠牲を受け続けている。
 トランプ政権には日米同盟の変質を模索する動きがある。ぜひとも普天間飛行場の移設に伴う辺野古新基地建設を見直し、県外・国外移設を検討してほしい。
 トランプ氏は敵対や分断を生み出すのではなく、世界を牽引(けんいん)する超大国の大統領として、融和や国際協調へと歩を進めるべきではないか。