<社説>宮古島市長3選 批判を謙虚に受け止めよ


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 農業や観光などの経済活性化や陸上自衛隊配備などが争点となった宮古島市長選は、現職の下地敏彦氏=自民推薦=が激戦を制し、3選を果たした。

 前県議の奥平一夫氏=民進推薦、前市議会議長の真栄城徳彦氏、医師の下地晃氏=社民、社大推薦=の新人3氏の市政刷新の訴えは届かなかった。
 下地氏は2期8年間の公共事業主導の経済振興策などが評価され、今後の活性化に向けた市民の期待感を取り込んだ形である。
 旧平良市を除く郊外の過疎化が進み、小、中学校の統廃合計画が浮上するなど、宮古島の少子高齢化は深刻化している。下地氏は、得意とする産業、経済振興分野で手腕を発揮し、島からの人材流出を防ぎ、定住を促す産業基盤の強化、雇用の創出に努めてほしい。
 前回の無投票再選から一転し、今回の市長選は保守陣営が下地氏と真栄城氏に分裂し、翁長雄志知事を支える「オール沖縄」勢力も分裂する中、下地氏の得票は3新人の合計得票を大きく下回った。
 建設業界の組織票を固め、薄氷の勝利を収めた下地氏だが、市民の批判を謙虚に受け止めるべきだ。
 争点となった陸上自衛隊配備問題で、下地氏は受け入れを表明している。防衛省が挙げた候補地二つのうち、千代田カントリークラブについては容認する姿勢だ。
 しかし、周辺住民の反対は根強く、下地氏の3選によって、宮古島市の将来を左右する陸自配備にお墨付きが与えられたと受け止めるのは早計だ。民意を軽視し、安倍政権と一体となって推進する姿勢を強めてはならない。丁寧に市民の声に向き合ってもらいたい。
 台風登庁時の飲酒、伊良部島の不法投棄ごみの残存問題で下地氏は市民に陳謝した。市の観光PR事業の委託業者選定を巡り、市に提出された文書の偽造と公金の不適正支出疑惑に関しては市議会の百条委員会が審議中だ。
 市長の資質と市政の透明性に疑念を抱かせる問題が相次いで噴き出したことに対する市民の不信感は根深い。下地氏はより一層襟を正し、市政運営に当たってもらいたい。
 翁長知事が支援した奥平氏は惜敗した。県内9市のうち、「オール沖縄」勢力の市長は2人のままだ。翁長知事と「オール沖縄」勢力は手痛い敗北を喫した要因を真摯(しんし)に分析する必要があるだろう。