<社説>安慶田副知事辞職 疑惑の徹底解明が先だ 知事は決然と対応を


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 安慶田光男副知事が教員採用試験と県教育庁人事への介入疑惑の責任を取り、辞職した。
 公正な県政運営に対する県民の信頼を大きく損ない、翁長県政が掲げる米軍普天間飛行場の辺野古移設阻止など基地問題のほか県政全般への影響は計り知れない。
 安慶田副知事は「報道の事実はない」と否定しながら辞意を表明した。到底、納得できない。任命者の翁長雄志知事は、安慶田副知事の関与が疑われる問題を徹底的に洗い出す責任がある。事実関係を明確にした上で制度の改善を含め万全の再発防止策を講じ、県政の信頼回復を図るべきだ。

市長選での影響回避か

 安慶田副知事は重ねて疑惑を否定しつつ、「県民に不安を与え、県政を混乱させたことは重大」などと辞職の理由を述べた。口利きの事実がなければ辞める理由はない。辞意表明により疑惑はいっそう深まったと言わざるを得ない。
 20日に会見した翁長知事、安慶田副知事は口利き疑惑の事実を全面的に否定した。そのわずか3日後に安慶田副知事が一転して辞職したのは不可解だ。
 22日には宮古島市長選の投開票があった。知事とともに特定候補者を支援する同市出身の安慶田副知事が選挙前に辞意を表明すると投票結果に影響を与えた可能性がある。それを慮(おもんぱか)り、選挙後に辞職のシナリオがなかったか。知事、副知事のやりとりを含め、この間の経緯をただしたい。
 安慶田副知事の関与の有無にかかわらず、県教育庁は不公正な教員採用、人事はなかったとしている。結果がそうだとしても疑惑は解明されねばならない。口利きの事実関係が不明なまま幕引きとしては、同様の口利きが繰り返される禍根を残しかねない。
 県議会は与野党を問わず問題を厳しく追及すべきだ。安慶田副知事は誠実に質疑に応じる責任から逃れられない。県教育庁の複数の関係者が口利きを証言しており、教員採用、人事決定の経緯を詳細にただし、疑惑を解明してもらいたい。
 副知事は県政の絶大な権力者だ。教育行政だけでなく、県発注工事の業者選定などへの関与も問いたださざるを得ない。この機会に、県政の全般にわたり県幹部の不公正な業務介入がないか、膿(うみ)を出し切る覚悟で徹底的に検証する必要がある。
 特別職の副知事は「公平・公正」な職務執行を求める県職員倫理規定の対象外である。今回の疑惑の解明と並行して、特別職の副知事にも処罰を科す条例制定など厳格な再発防止策を講じてもらいたい。

県民の信頼揺らぐ

 翁長知事は那覇市長から「辺野古新基地阻止」を公約に掲げて県知事に当選し、腹心として那覇市議会議長だった安慶田氏を副知事に起用した。2人は辺野古新基地反対の民意を担う保革を超えた「オール沖縄」県政の要である。
 政府は「基地と沖縄振興のリンク」を公然化して県政への圧力を強め、警察や司法を従わせて辺野古新基地の工事を再開した。
 不当な国の圧力に屈せず、沖縄の民意を訴え、正義を貫く。そのような姿勢で辺野古新基地問題の政府との交渉役の重責を担ってきたのが安慶田副知事である。安慶田副知事の疑惑と辞職は、基地問題に対する翁長県政の正義と公正さへの県民の信頼に大きなダメージを与えるものだ。
 翁長知事は安慶田副知事の辞意を受けて記者会見し、辞職を発表した。しかし疑惑の真否が不明確なまま辞職を受け入れるのは釈然としない。政府の不当に立ち向かう毅然(きぜん)とした対応には程遠い。
 翁長知事には真相追及の先頭に立つ決然とした対応を求めたい。知事が県政内部の疑惑解明に後ろ向きの姿勢では、副知事辞職で揺らぐ県政への信頼が決定的に失墜することを認識すべきだ。
 安慶田副知事の口利き疑惑は、翁長知事の任命責任も同時に問われていることを指摘したい。