<社説>初報は「墜落」 言葉遊びより配備撤回を


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 昨年12月13日に起きた名護市安部のオスプレイ事故について、米海兵隊は事故直後に航空自衛隊に「墜落の可能性がある」と伝えていたことが分かった。沖縄防衛局も当初、名護市に「墜落の可能性がある」と伝えていた。しかし米軍はその後「浅瀬に着水」、防衛省も「不時着水」と改めた。県民の反発をかわすために矮小(わいしょう)化したとしか思えない。

 事故は本島北東の訓練区域「ホテルホテル」での空中給油訓練の際、オスプレイの回転翼と給油機のホースが接触し、回転翼が損傷したのが原因とされる。
 回転翼を損傷したオスプレイは訓練区域から約74キロ離れた名護市安部の海岸浅瀬に墜落した。オスプレイが離着陸する時は通常、回転翼の向きを地面と水平にするヘリモードにしなければならない。地面と垂直になる固定翼モードだと、回転翼が地面に接触してしまうからだ。
 墜落した機体をみると、固定翼モードになっている。防衛省も「着水状況は固定翼モードだと推定される」と説明する。それを裏付けるようにプロペラは両翼とも大破し、原形をとどめていない。地面に接触したからだろう。
 つまり事故機は通常の着陸態勢では着地できていない。何らかの理由で着陸時のヘリモードにすることができず、浅瀬に着水した。事故直後、機体は真っ二つに折れていた。どう考えても不時着という概念で捉える方が無理がある。墜落と考える方が自然だ。
 琉球新報は紙面では当初から事故を墜落と報じてきた。米大手AP通信、英ロイター通信など欧米メディアも墜落と報じている。しかし日本の大手メディアの大半は不時着として報道を続けた。日米両政府の発表をなぞっているのだ。日本国内では事故矮小化が成功したと言ってよい。
 米軍はこれまでも米軍機事故で墜落という言葉を使って発表することは少ない。機体が大破しても「激しい衝撃を伴う着陸」を意味する「ハードランディング」などと発表してきた。1998年にキャンプ・ハンセンで起きたヘリ事故も米軍は当初「事故」ではなく「出来事」と発表していた。翌年発表した報告書で米軍は墜落を認めている。
 言葉遊びはもうたくさんだ。日米両政府はオスプレイの沖縄配備を撤回し、全機撤去を実施すべきだ。