<社説>「南風原花織」指定 「工芸文化」豊かさの証しだ


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 100年を超える伝統、それを受け継ぐ女性らの思いが花開いた。

 南風原町特産の「南風原花織」が、経済産業大臣指定の伝統的工芸品に指定された。琉球王朝時代に源流があるとされる織物技法を受け継ぎ、沖縄戦後の復興と発展・継承に力を注いできた関係者の労をたたえたい。
 今回の指定で県内の伝統的工芸品は15品目となった。これまで指定されたのは久米島紬(つむぎ)や宮古上布、読谷山花織などがある。南風原花織も指定を契機に知名度の向上が期待される。
 一般的な織物では、縦糸を通す綜絖(そうこう)という機具を二つ使うが、南風原花織は八つ、多いときは10個も使う。この複雑な工程によって多彩に染められた糸による紋様が浮かび上がる。刺しゅうを施したようにも見える立体感が特徴だ。
 1日の作業で1~2メートルほどしか進まないといい、それだけ職人には熟練した技能が求められる。
 指定により、生産者団体の琉球絣(かすり)事業協同組合が実施する事業には、国からの補助金が交付される。組合は後継者育成や需要開拓などに取り組む考えを示している。
 熟練の技を未来へつなぐためにも補助金を有効に活用し、生産基盤の充実に努めてもらいたい。
 沖縄の絣は東南アジアから技法が伝わり、琉球王朝時代に発展した。その後日本に広がり、薩摩絣、久留米絣、伊予絣などのルーツともなったとされる。南風原町は戦前から織物のまちとして栄え、現在もかすり会館をはじめ、多くの工房、関連する職人らが存在する。
 南風原町は「かすりロード」と名付けて、関連施設やゆかりの場所などを巡り、制作体験もできる観光ルートを設定している。生産にとどまらず、観光資源としても今後さらなる発展を期待したい。
 今回の指定で伝統的工芸品は全国で225品目となった。都道府県別では、京都の17、東京、新潟の16に次ぎ、15の沖縄は4番目に多い。豊かな工芸文化を持つことの証しといえる。
 先人から受け継いだ文化をさらに発展させるには、まず県民が親しむ機会を増やすことが必要だろう。南風原花織もシャツや小物など新たな創作に挑戦している。「高根の花」として生活から懸け離れたものとしてはならない。
 指定を契機に改めて沖縄の工芸文化を見直し、暮らしの中にどう生かしていくか。次代につなげるためにも触れる機会を増やしたい。