<社説>学童利用料減額 実効性ある具体策広げよう


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 子どもを保育所に預けて共働きで家計をやりくりしていたが、小学校に入学すると預け先がない-。この「小1の壁」が子育て支援の課題に浮上して久しい。受け皿となる放課後児童クラブ(学童クラブ)の重要性が年々増している。

 学童クラブの保育料・利用料について、県内14市町村が経済的に厳しい世帯の負担軽減に取り組んでいる。深刻化する「子どもの貧困」対策の一環として、県が保育料・利用料の補助を始めた昨年秋以降、減額制度を導入する市町村が増えている。
 経済的な格差によって、子を預けたくても預けられない保護者の利用を促進し、子どもの居場所づくりにも寄与する。実効性がある具体策を評価したい。
 利用料減額の財源として、9市町村が県の子どもの貧困対策推進交付金を活用している。4市町は独自予算で工面し、1町は一括交付金を充てている。2016年度の利用者は500人を超える。
 子ども3人の毎月の利用料約3万円が助成を受けて半額になった母親は「将来に向けて教育費をためたい」と話す。厳しい家計の中で、子の将来を見据えたやりくりができる喜びに実感が込もる。
 子どもの貧困の連鎖を断ち切る有効打と位置付け、未導入の市町村もできるだけ早く導入して子育て環境整備に努めてもらいたい。
 一方、県内は公立でなく、民立民営の学童クラブが9割を占め、保育料が全国に比べて高い。16年5月現在、県内の学童クラブは373カ所あり、1万5501人が登録している。だが、入所を希望しても入れなかった待機児童は661人に上っている。
 その背景には、小学校などの空き教室など公的施設の利用が停滞していることがある。公的施設を活用するクラブは全国平均で86%あるが、県内は民間施設利用が6割を占めている。家賃や送迎費を負担するため、どうしても利用料が高く設定される。
 共働きやひとり親世帯が多い県内では学童クラブの役割は大きい。地域の歴史や文化を学ぶ活動をするクラブもあり、地域の財産にもなっている。
 市町村と教育委員会、学校側が連携を深めて公的施設の利用率を高め、受け皿を増やしてもらいたい。それは保育料軽減にもつながる。県内で進まない理由を明確にし、先進的な事例を踏まえれば、できないことではないはずだ。