<社説>入国禁止批判拡大 日本も人権守る意志示せ


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 イスラム教徒を敵視するような入国禁止措置に正当性はない。人権を守る世界の強固な意志を突き付け、大統領令撤回につなげたい。

 トランプ米大統領が指示したイスラム圏7カ国からの入国禁止措置への非難が米国内で拡大し、世界にも広がりを見せている。信仰の自由と人権尊重を求める大きなうねりを歓迎する。
 ニューヨーク州など15州と首都の司法長官が入国禁止措置は「危険で憲法違反だ」と非難する共同声明を発表した。このうちワシントン州司法長官は、憲法違反に当たるとして無効化を求め提訴した。
 米産業界でも異論が相次いでいる。金融大手ゴールドマン・サックスなど、トランプ政権に協力し「身内」とみられた企業のトップも反対の立場を明確にしている。
 人権に敏感な米国社会の力をさらに発揮し、偏見に満ちた政策は見直すべきだということをトランプ氏に認識させてほしい。
 ノースカロライナ大のチャールズ・クスマン教授は2001年の米中枢同時テロ以降、今回入国禁止となった7カ国の出身者や移民の子どもらが米国でテロを起こし、国民を殺害したケースはなかったとする報告書を発表した。
 7カ国を選んだ根拠さえ不透明ということだ。トランプ氏がその国でビジネスをしたかを選別基準にした疑いさえある。
 危機感を募らせる米国社会や世界の声に、トランプ氏は耳を傾けるべきである。だがトランプ氏は「米国を再び安全にするためだ」とし、非難を真摯(しんし)に受け止めていない。
 米国の同盟国であるドイツの外相も非難の声を上げている。対照的に日本政府は腰が引けている。
 「強固な日米同盟」を目指す安倍晋三首相は参院予算委員会で「私はコメントする立場にはない」とし、人権を守る強い意志は示さなかった。日米首脳会談を控えていることは、理由にならない。このままでは人権問題に後ろ向きな国との烙印(らくいん)を押されかねない。
 米国に物言わぬ対応は在沖米軍基地問題と同じく、安倍首相の人権軽視と対米従属姿勢を露呈したと断じるしかない。
 安倍首相もトランプ氏と同様、普遍的価値である人権の重みをかみ締め、行動に移すことが求められていることを深く自覚する必要がある。