<社説>PKO日報公表 南スーダン派遣再検討を


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 この情報が国会に提出されていたら、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の継続と、派遣する陸上自衛隊部隊に「駆け付け警護」を付与する命令を下せただろうか。

 防衛省は南スーダンPKO部隊の活動内容が書かれた日報の一部を公表した。当初、廃棄済みを理由に不開示としていたが、与党議員が自身のツイッターで文書の存在を明かしたところ、一転保管を認めた。
 昨年7月に発生した大規模衝突以降、南スーダンの治安情勢は悪化している。公表した日報は、この時期のもので、大規模戦闘に巻き込まれる危険性や、今後予想されるシナリオとして「国連活動の停止」に言及している。派遣に反対する世論の高まりを恐れた防衛省が意図的に隠したのであれば、看過できない。
 国連は7日、南スーダン情勢について「大虐殺が起きる恐れがある」と警告した。南スーダンのPKOに陸自の派遣を続けるべきかどうか国会で論議すべきだ。
 政府はこれまで首都ジュバの治安情勢は「比較的落ち着いている」「PKO法上の武力紛争は発生していない」と主張し、陸自に駆け付け警護の任務を付与し派遣を継続した。
 駆け付け警護は、離れた場所にいる国連要員らが襲撃された場合に陸自隊員が武器を持って救援に向かう任務だ。
 これまで、武器使用の相手の武装集団が「国や国に準ずる組織」なら憲法が禁じる海外での武力行使につながる恐れがあると認めてこなかった。駆け付け警護によって自衛隊は、紛争に巻き込まれる危険性が高まった。
 国連は昨年11月、南スーダンでジェノサイド(民族大虐殺)に発展する可能性を示した。7日には大虐殺を警告する声明を改めて発表した。声明は、国内で戦闘が継続していると批判。市民の殺害や性的暴力も続いており、1月だけで国民5万2千人以上が隣国ウガンダに避難したとしている。
 政府は南スーダンの情勢を甘く見ていないか。安倍晋三首相は衆院予算委員会で、南スーダンのPKOに派遣した自衛隊員に死傷者などの犠牲が出た場合、首相辞任の覚悟を持たなければいけないと語った。しかし、必要なことは政治家の勇ましい発言ではなく、冷静な議論である。