<社説>17年度県予算案 アジア戦略で経済活性化を


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 県の2017年度当初予算案が決まった。本年度比で187億円減、9年ぶりの減額である。米軍普天間飛行場移設問題で政府が公然化した「基地問題と振興策のリンク」を背景に国庫支出金が10%余も減額されたことは遺憾だ。

 確保した総額7354億円のうち、「アジア経済戦略構想」に225億円、「子どもの貧困対策」に173億円を投じる。
 国庫支出金の下げ圧力の中で、アジアと結ぶ「経済振興策」と、沖縄の将来を担う人材育成につながる「子どもの暮らし」の最低限の保障に力を注ぐのは適切な予算配分だ。
 アジア経済戦略関連では観光産業の基盤となる那覇空港整備や海外企業の誘致、投資を促進するビジネスネットワーク事業、医療・健康、IT関連に重点を置いた。
 政府の「骨太の方針」は「アジアの玄関口にある沖縄の優位性と潜在力を生かし、日本のフロントランナーとして経済再生のけん引役となるよう国家戦略として沖縄振興策を推進する」と明記する。
 今国会の首相施政方針も「観光立国」の要として「沖縄はアジアとの懸け橋。わが国の観光や物流のゲートウエー」と述べている。
 沖縄のアジア戦略は政府のアジア戦略の重要な位置を担う。目に見える成果を出すことが国の支援を引き出す鍵になる。県と経済団体が一体となって、力強くアジア戦略を進めてほしい。
 国庫支出金が大幅減となる中で、自主財源の県税収入は3年連続で1千億円台を見込む。アジア戦略構想を軸に、観光、物流の経済活性化により県内の景気を押し上げることは県民の所得向上、子どもの貧困からの脱却にもつながる。
 県民生活の向上には米軍基地対策も引き続き重要な県政の課題だ。政府が強引に進める辺野古新基地建設、相次ぐ米軍機墜落など基地被害をどう食い止めるか。馬耳東風の日米両政府に対しては必要な情報を収集し、国内だけでなく直接、米国や国際世論に訴える情報発信が重要だ。
 辺野古新基地の工事が本格化し翁長県政は阻止する対抗姿勢だけに、18年度予算の国庫支出金も厳しい査定が予想される。予算減の標的となった一括交付金の執行率の改善や予算要求のしっかりとした理論武装が必要だ。
 不要不急の支出をなくし、行政サービスを低下させない効率的な県政運営を求める。