<社説>那覇避難所未耐震 防災施策の縦割りやめよ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 災害から人命を守る意識が希薄だと言わざるを得ない。防災施策の全面的な見直しが必要だ。

 那覇市が2015年9月に決定した市内の指定避難所40カ所のうち17カ所で耐震基準を満たしていないことが分かった。40カ所はいずれも公立小中学校の体育館だ。
 市の担当部署は避難所の選定段階で、これらの体育館が建築基準法上の耐震基準を満たしていないことを認識していた。にもかかわらず、避難所の指定基準を定めた災害対策基本法に耐震性の有無に関する記述はないとして、そのまま避難所に指定したという。
 理解し難い。法律の記述の有無が問題ではない。「地震で倒壊する恐れのある建物を避難所にすることはあり得ない」とする内閣府の指摘が常識的な考え方だ。
 大地震発生時の惨状を想像できなかったのだろうか。津波が襲来する恐れがある低地以外に立地する学校の体育館を避難所に指定したようだが、地震で体育館が崩壊しては避難のしようがない。
 崩壊した時は「別の避難所に案内する」と市は説明するが、耐震基準を満たした別の建物を避難所に指定するのが本来の在り方だ。災害時の避難は一刻を争うのだ。
 問題は那覇市の庁内で防災施策の連携がなされていない点にある。
防災を担当する部署と市内公立小中学校を管轄する市教育委員会の間で連携がなかったがために、このような齟齬(そご)が起きたのだ。市民の生命保護を第一に考え、防災施策の縦割りを排すべきだ。
 昨年10月の台風18号接近時には、大地震などで倒壊の恐れがある那覇市民会館を避難所として一時設定していた。耐震性の問題が庁内で共有されていたにもかかわらず、ミスが起きたのである。これらを反省し、庁内の密な連携によって万全な防災対策を確立してほしい。
 もとより、耐震基準を満たしていない体育館が現在も使われていること自体、由々しき問題だ。児童生徒の安全を確保するため、計画的な改築、補強工事を早急に進めるべきだ。
 耐震基準を満たしていない公共建造物を避難所とした事例は那覇市以外にもあるのではないか。各市町村はどのような建物を避難所にしているか、耐震基準は満たしているか、確認を急ぐべきだ。那覇市だけの問題とせず、全市町村で危機感を共有してほしい。