<社説>北朝鮮ミサイル発射 北・米の「敵対関係」改善を


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 日米首脳会談の直後に北朝鮮が日本海にミサイルを発射し、「日米同盟強化」をうたう日米の蜜月ムードに冷や水を浴びせた。

 日米首脳が北朝鮮の脅威に対する連携強化を確認したことに反発した挑発行為と見られている。
 米トランプ新政権は先に訪韓したマティス国防長官が「(北朝鮮の)いかなる核兵器の使用にも圧倒的な対応を取る」と、“核の傘”による対抗措置も辞さない強い意志を示した。
 米韓は韓国への米軍最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備計画を進めており、マティス氏はTHAADの促進と米韓合同演習や日米韓の連携強化も併せて強調した。
 ミサイル発射は、こうした日米韓の軍事的な包囲網強化への危機感を示したものだろう。
 日米韓各政府は即座に抗議を表明し、国連安保理の緊急会合を要請した。安保理決議に反するミサイル開発は各国の安全保障の脅威であり、断固たる措置は当然だ。
 ただ度重なるミサイル発射への安保理決議や制裁措置が有効な歯止めとなっていないのも事実だ。
 米新政権が北朝鮮核問題を「安全保障の最優先課題」とレベルアップし、核使用を示唆する「圧倒的な対応」を打ち出したことが北朝鮮の過剰反応を招いた側面も否定できないのではないか。
 ミサイル開発の脅威への軍事対応の強化が新たな北朝鮮の挑発行為を招き、軍事的な緊張が高まる悪循環に陥ることを危惧する。
 北朝鮮は米国を射程に入れる陸上型、潜水艦発射ミサイルの実験を進めている。米国へのミサイル攻撃の脅威が高まる中で、米国は対北朝鮮の強硬姿勢を強めている。
 一方、北朝鮮はこの間、米国に朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換するよう求めているが米国は応じる姿勢を見せていない。
 木村朗鹿児島大教授は「北朝鮮を仮想敵国とする米韓合同演習の中止」など、米国が敵対政策を転換する中から「休戦協定を平和協定に改定する」対話路線を提起している。
 核開発の脅威に国際社会が警告と制裁を発動する一方で、根本の問題である米国と北朝鮮の敵対関係を改善する道筋も模索すべきだ。
 安倍晋三首相は施政方針演説で北朝鮮に対する「対話と圧力」を強調した。北朝鮮と日米韓の双方が過度に緊張を高めぬ冷静な判断と対話の努力を求めたい。