<社説>オスプレイ危険高度 直ちに飛行停止せよ 「欠陥と低空」二重の不安


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 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイに関する日本政府の二重基準が明らかになった。

 オスプレイは米軍普天間飛行場代替施設の辺野古新基地への配備が既定路線でありながら、日本政府の意向で公文書から配備に関する表記が削除された経緯がある。
 日本政府が国民世論の反発を避けるための方策であり、当初からその配備には疑問符が付いた。
 今回明らかになった事実も深刻だ。日本政府は安全策として最低安全高度を500フィート(約150メートル)以上と県民に説明したが、米軍の運用上は200フィート(約60メートル)での飛行もあり得るとの内容だ。

米軍の運用優先

 航空法施行規則によると、最低安全高度とはエンジンが停止した際に地上や水上の人、物に危険を及ぼすことなく着陸できる高度のことだ。人家密集地域で最も高い障害物から300メートル、水上などでは150メートルなどと定めている。
 2013年には操縦士が共同通信の取材に「低空飛行訓練は200フィートまで下げて飛ぶ」と答えている。オスプレイの飛行訓練ルートは東北から九州まで六つある。県外各地では実際に低空飛行訓練がこれまで実施されてきた。沖縄だけ低空飛行がないと言われても信じ難い。危険は沖縄だけにとどまらないのだ。
 オスプレイの配備に当たって、日米両政府の合意に「安全性を確保するため、その高度(500フィート)を下回る飛行をせざるを得ない場合もある」とのただし書きがあった。例外を設けることで国民の安全より、米軍の運用を優先したと言われても仕方がない。
 オスプレイの低空飛行が危険なのは、機体の構造に不備があり、緊急時に対応が困難だからだ。
 専門家によると、エンジン停止時に気流をプロペラに受けて回転させ、軟着陸する自動回転(オートローテーション)機能がオスプレイには欠けている。防衛省は自動回転機能を有するとしているが、それでも従来のヘリに比べて機体が重く、プロペラが小さいことから1分間に機体が落下する降下率は約5千フィート(1525メートル)とされる。既存のヘリの降下率は1分間に1600フィート(約487メートル)であり、オスプレイの落下速度は3倍にもなる。
 一方、オスプレイがヘリモードから固定翼モードに転換するには約12秒かかる。固定翼で滑空するにしろ、自動回転機能を使うにしても60メートルでは危険回避の手順を踏む前に機体は地面に激突する。

拭えぬ疑念

 問題なのは日本政府がこれまで二重基準を容認してきたことだ。配備の事実隠し、最低安全高度の設定など国民への説明を避け、密室で米国と合意を重ねてきた。
 欠陥機との指摘があるオスプレイを配備する必然性が見当たらない。その上に危険な低空飛行を容認するならば、いつ頭上に落ちてくるか不安でならない。国民・県民を安心させるには運用改善といった小手先の対処では不十分だ。オスプレイの即時飛行停止しか解決策はない。
 ハワイでは15年に、低高度で空中制止したオスプレイが自らのエンジンで巻き上げた砂やちりによってエンジンが停止し、墜落した。
 米軍の報告書によれば、10~12米会計年度にアフガニスタンで起きたオスプレイの事故は約90時間に1件で、全航空機の約3746時間に1件と比べ突出している。
 そもそもオスプレイは軍用機として適当なのか。名護での墜落につながった空中給油をはじめ、荒れ地での離着陸などといった特殊な作戦行動に向かない構造的な欠陥があるとの疑念が拭えない。
 日本政府が米軍の顔色をうかがい、国民に二枚舌を使うような状況では、対策を取ることなど考えられない。沖縄をはじめ、全国各地の住民が危険な低空飛行、さらにはオスプレイ配備に反対の声を上げるしか道はない。