<社説>嘉手納爆音訴訟判決 「第三者行為論」で逃げるな


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 米軍嘉手納基地の周辺住民2万2048人が、夜間・早朝の米軍機飛行差し止めや過去・将来分の損害賠償を求めた第3次嘉手納爆音訴訟の判決がきょう那覇地裁沖縄支部で言い渡される。

 1982年の第1次、2000年の第2次訴訟とも、司法は米軍飛行場の運用は日本政府の支配が及ばないとする「第三者行為論」で飛行差し止め請求を退けた。
 第3次訴訟原告団は全国の基地爆音訴訟の中で最大である。提訴を重ねるごとに原告が増えたことは、爆音被害がより深刻化していることの証しである。
 司法は「第三者行為論」に3度、逃げてはならない。
 原告は心臓血管系疾患などのリスクを増大させるとして、爆音による健康被害の立証に力を入れてきた。裁判所が健康被害をどこまで認定するのかも焦点だ。損害賠償の将来分や、2次訴訟で認められなかった読谷村座喜味以北の住民の損害賠償が認められるかも注目される。
 住民は日常生活で電車が通るガード下の騒音(約100デシベル)や、自動車の前1~2メートルで聞く警笛に匹敵する110デシベルの爆音にさらされている。「静かな夜を返して」との住民の切実な願いをかなえるため、司法は爆音被害を解消する抜本対策を国に求めるべきだ。
 過去2回の判決は爆音被害に対する賠償を国に課した。それなら、原因の除去も国に命じるべきだった。飛行差し止めまで踏み込むことは司法の在り方として当然だ。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」との憲法25条とも合致するからだ。
 昨年11月、嘉手納基地で繰り返されている深夜・未明の外来機離陸を巡り、米空軍制服組トップの参謀総長が「(ドイツの米航空基地司令官の在任時には)地元自治体に離陸を通告し、なぜ飛ぶのかを確実に知らせていた」と述べた。
 イタリアの米航空基地はイタリア軍司令官の許可がなければ訓練できず、1日の離着陸回数を44回に総量規制されている基地がある。夏場の昼寝の時間帯は一切飛ばず、住民の生活が最優先されている。
 しかし、米軍は沖縄では深夜・未明の離着陸を原則禁止する騒音防止協定を破り続けている。この二重基準を放置し続けることは、もはや許されない。