<社説>米政権取材規制 不都合報道つぶし許されぬ


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 米ホワイトハウスでの大統領報道官による記者説明の場で、CNNテレビやニューヨーク・タイムズ紙など一部メディアの記者が参加を許可されず、締め出された。トランプ政権に批判的な報道への報復とも取れる取材規制だ。報道の自由を侵害する重大な事態であり、看過できない。

 米合衆国憲法修正第1条には「言論・出版の自由もしくは人民が平穏に集会して不満の解消を求めて政府に請願する権利を奪う法律を制定してはならない」とあり、言論の自由・表現の自由を保障している。米大統領も、この憲法に従わなければならないはずだ。
 締め出されたニューヨーク・タイムズは大統領選中にトランプ陣営幹部がロシア側と接触し、情報機関が通話記録を持っていると報じていた。続報としてCNNが大統領補佐官が連邦捜査局(FBI)に報道が虚偽だと発表するよう依頼したと報じている。
 このため今回の締め出しは、政権にとって不都合な記事を出した報道機関への狙い撃ちとみられている。ホワイトハウス記者会は「強く抗議する」と反発した。即座に異議を唱えたのは当然だ。
 米国で起きている取材妨害について、沖縄の新聞は人ごとのように眺めていることはできない。
 2005年4月、沖縄からイラクに派遣されていた在沖米海兵隊の第31海兵遠征部隊のヘリ部隊が普天間飛行場に帰還した際、海兵隊はメディアを選別して基地内取材を許可した。取材を申し込んでいた琉球新報など沖縄のメディア数社は拒否されている。
 15年6月の自民党若手議員の勉強会で「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」との発言も飛び出した。16年8月には北部訓練場ヘリパッド建設に反対する市民を取材していた琉球新報など沖縄2紙の記者が機動隊によって強制排除され、一時拘束された。日本でも報道の自由が脅かされる現状が横たわる。
 国民主権の原理に立つ民主主義国家にとって、報道の自由・表現の自由を保障することは大原則だ。政権がこれを踏みにじるならば、独裁国家と呼ぶほかない。トランプ政権は不都合な報道をつぶそうとするのではなく、自身の政策への説明を丁寧に尽くすべきだ。米国だけでなく、日本や世界でこれ以上、報道の自由を侵害する事態が起きることは許されない。