<社説>東京MXの見解 事実曲げて開き直るとは


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 事実をねじ曲げた番組を反省せず開き直るとはどういうことか。事実を放送する責任を放棄するならば、存在意義さえ疑われる。

 東京MXテレビは、1月2日放送の「ニュース女子」について「事実関係において捏造(ねつぞう)、虚偽があったとは認められず、放送法および放送基準に沿った内容だった」との見解を発表した。今後も虚偽を事実として放送すると宣言したに等しい。
 事実でないことをあたかも事実であるかのように伝えることは「捏造」にほかならない。真実でないことを真実と見せ掛けることは「虚偽」以外の何物でもない。
 番組では、米軍北部訓練場のヘリパッド建設反対運動に参加する人たちを「テロリスト」に例え、反対運動で救急車が現場に向かえないなど、数々の「うそ」を流した。にもかかわらず「捏造、虚偽があったとは認められない」と結論付けたのである。承服できない。
 東京MXの「放送番組の基準」には「放送を通じてすべての人の人権を守り、人格を尊重する。個人、団体の名誉、信用を傷つけない」とある。
 ヘイトスピーチ(憎悪表現)などに反対する団体「のりこえねっと」の辛淑玉(シンスゴ)共同代表は、沖縄の基地反対運動を扇動する黒幕であるかのような虚偽の内容で批判された。「放送基準」に反する明らかな名誉棄損(きそん)である。
 「放送基準」には「政治、経済、社会生活上の諸問題は公平、公正に取り扱う」ともある。だが、番組を制作したDHCシアターは「犯罪や不法行為を行っている集団を内包し、容認している基地反対派の言い分を聞く必要はない」としている。「放送基準」からも到底認められないはずだ。
 東京MXは「違法行為を行う過激な活動家に焦点を当てるがあまり、適法に活動されている方々に関して誤解を生じさせる余地のある表現」があり「遺憾」ともした。
 「誤解」とは、視聴者が間違った解釈をすることであり、そのことが残念だったと言っているにすぎない。
 東京MXは再取材して放送することも表明した。事実を追求する姿勢がない現状のままでは、事実に迫る番組は期待できない。
 放送は全て事実に基づかなければならない。その常道を踏み外したことを真摯(しんし)に反省し、対策を講じない限り、東京MXは信頼を回復できない。