<社説>南部水道不透明昇給 自浄能力が問われている


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 昇給が根拠なく実行されたらどうなるか。税金で運営される公的機関であれば、条例や規則に基づき、明確な基準が示されている。それに反することは許されず、透明性を確保するのは当然のことだ。

 南風原、八重瀬の2町の水道事業を担う南部水道企業団(赤嶺勤企業長)で2000年以降、4人の職員が不透明な昇給をしていることが本紙取材で分かった。
 水道企業団は独立採算組織で、生活に必要な水を供給し、住民からの水道料金を主な収入源としている。公的サービスを提供する組織で、なぜ根拠を示せない昇給があったのか。企業団は住民が納得のいく説明をする責任がある。
 問題となっているのは、規則で定める上昇幅を超えた給与の引き上げ、「飛び級」が3人いたことだ。さらに別の職員1人は辞令がなく昇給したことが分かっている。
 公務員の給与体系は職務経験年数に応じた「号」と、課長職など仕事の責任の重さに応じた「級」の組み合わせで決まる。
 「飛び級」の職員は2級4号から4級1号、5級13号から7級12号、5級13号から7級13号とそれぞれ上がっているが、企業団の給与規則には「飛び級」を認める条文がない。規則にない格差是正の昇給も複数回あった。
 辞令なしで昇給した職員は人事院勧告を受けた給与改定でも誤った適用で規定より多い給与を受け取っている。
 能力に見合った必要な昇給だと企業団が認めたというのであれば、明確な根拠、ないしは特段の事情を明らかにすべきだ。それができないのであれば、特定の職員に対する「お手盛り」と指摘されても仕方ない。
 これらの昇給により、4人の月額給与は3万3700円~10万円ほど増額している。繰り返すが企業団の収入源は南風原、八重瀬両町民が支払う水道料金である。生活に不可欠な水への対価は税金と等しい。それが恣意(しい)的に使われたのであれば、不透明な昇給に関わった企業団幹部の責任は重大だ。
 企業団のような一部事務組合には、自治体と比べ住民や議会の監視が届きにくいことを琉大法科大学院教授の井上禎男氏が課題として指摘している。企業団は外部の指摘を待たず、自ら経緯と再発防止策を示すべきだ。問われているのは企業団の自浄能力である。