<社説>最低賃金破り 生産性向上へ支援強化を


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 これでは安定した生活を維持するどころか、将来の生活設計も描けない。
 国が定める最低賃金を下回る給与で働く中小企業労働者の比率(未満率)で、全国の値と比較できる直近の2015年度の県の比率が全国平均を3・3ポイント上回る5・2%となり、全国で最も高くなっている。
 県内では、パートやアルバイトといった最低賃金で働く非正規労働者に頼る中小企業や零細企業などが多い。最低賃金を順守させるための周知とともに、人件費増で経営が圧迫される中小・零細企業に対する生産性向上の支援を強化すべきだ。
 県内の16年度の未満率は2・9%で全国ワースト6位。全国の値と比較できる14年度は全国平均を0・4ポイント上回る2・4%でワースト9位、13年度は1・2ポイント上回る3・1%でワースト4位、12年度は2・2ポイント上回る4・3%でワースト2位だった。
 使用者が最低賃金額未満の賃金を支払った場合には、最低賃金額との差額を支払わなければならない。国や自治体の周知徹底だけでなく、最低賃金破りを見逃さないよう労使の意識改革が必要だ。
 県が14年度に発表した報告書によると、直近1年間の採用者のうち、80・1%を最低賃金などで働く非正規社員が占めるなど、不安定な雇用形態が圧倒的に多い。特にリーディング産業である観光関連や、飲食業で非正規率が9割を超える。
 琉球新報が昨年10~11月に実施した県民意識調査で、生活の悩みを質問すると、最も多くの人が挙げたのは「収入・所得」だった。前回を10・9ポイント下回る38・6%だったが、初回の01年調査からずっと最多だ。最低賃金が全国最下位で、平均所得も全国平均の7割、非正規だけでなく正規雇用でも全国との賃金格差が大きくなっているからだ。
 企業に対する周知徹底だけでは問題は解決しない。県内はほとんどが中小・零細企業だ。県内の16年度最低賃金は、02年度の現方式移行後最大の21円引き上げられた。今後もさらに引き上げられるとみられるが、引き上げに体力が追い付いていない企業もある。
 個々の事業を対象にした業務改善助成金や、業種別中小企業団体助成金など国の支援策を積極的に活用して生産性向上に取り組み、賃金引き上げにつなげてほしい。