<社説>就職活動本格開始 働き方を大事にしよう


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 2018年春に卒業する大学生の就職活動が1日から本格的に始まった。6月には面接などの選考活動が解禁される。3カ月の短期決戦だが、自らの将来を決める大事な期間だ。学生には悔いのない会社選びをしてもらいたい。

 県内だけでなく全国的に人手不足感がある中、ここ数年は学生に有利な「売り手市場」といわれる。
 確かに新規大卒者の内定率は全国平均が2011年の91・0%から年々上がり、16年は過去最高の97・3%に達した。だが県内は11年が59・8%で15年は77・0%にとどまる。差は縮まっているが、県内の新卒就職状況は依然厳しい。
 背景には雇用のミスマッチが挙げられる。沖縄総合事務局が15年に行ったアンケートでは、失業率や離職率が高い理由として、回答した学生239人の69%が「賃金が安い」と答え、52%が「正規雇用の少なさ」を挙げている。
 意欲のある学生が多くても、賃金の低さから来る将来への不安があり、身分の不安定な非正規雇用ではその受け皿になることは難しい。
 沖縄公庫が実施した調査でも、学生の就業意識の問題だけでなく低賃金で休暇制度が整わない企業側にも課題があるとしている。
 さらに今年は働き方についても学生の関心は高い。従来から会社を選ぶ基準として「社内の人間関係」「仕事のやりがい」を挙げる学生は多かった。大阪の人材サービス会社が1月に行った調査によると、広告最大手の電通で起きた過労死自殺も影響し「長時間労働やサービス残業の有無」を重視する学生が多いという。
 企業側はこうした学生の声を反映し、仕事と生活が調和した働き方を提案してもらいたい。コスト面などの負担は大きいだろうが、長期的な視点で見れば、人材の確保など好結果につながることは確実だからだ。
 学生側も働くことの意義を改めて問い直してほしい。沖縄総合事務局の調査によると、企業側が学生に求めるのは「コミュニケーション能力」「成長意欲」「主体性」などだ。就職活動に当たっては積極性を発揮する必要がある。
 なぜこの職種なのか、なぜこの会社を選んだのか。仕事には「自己実現」「社会貢献」という側面もある。多くの学生が自らの能力に合った会社を選び、社会に羽ばたくことを期待したい。